Point
■バイオ炭 と肥料を組み合わせることで、熱帯雨林の苗木の高さと直径の成長が著しく改善され、葉の数も増加することが判明
■バイオ炭は、アマゾンの原住民が数千年前から「黒い土」として用いていた
■バイオ炭は、土壌の酸性化を防ぎ、微生物にとって最適な住環境を提供し、時間を掛けて肥料を土に放出する機能を持つ
毎年1,500万ヘクタール(北海道、九州、四国を合計した面積)の速度で減少を続ける熱帯雨林。その要因の一部となっているのが、違法な金鉱採掘による土壌汚染です。
樹木を奪われた熱帯雨林を蘇らせるためのヒントが、数千年前から地元の人々によって用いられてきた農業技術の中にあることが分かりました。
米ウェイクフォレスト大学のCenter for Amazonian Scientific Innovation (CINCIA) のマイルス・シルマン氏らが行った最近の研究で、生物資源を材料とした炭化物である「バイオ炭 (Biochar) 」が、アマゾンの熱帯雨林の再生に役立つことが示されたのです。論文は、雑誌「Forest」に掲載されています。
https://www.mdpi.com/1999-4907/10/8/678/htm
金鉱採掘などによって進む熱帯雨林の減少
熱帯雨林に生息する大量の樹木は、大気中の二酸化炭素を吸収する役割を担っています。この熱帯雨林を取り戻すことは、気候変動に歯止めをかける上で重要な課題の1つです。
森林破壊の問題は、金鉱採掘が盛んに行われている地域においては特に深刻で、樹木だけでなく、土壌までもが破壊されています。これらの損失を補うため、樹木を植え、肥料を与え、育てることには、莫大な費用が必要です。
そんな中、研究チームは、バイオ炭と肥料を組み合わせることで、苗木の高さと直径の成長が著しく改善され、苗から出る葉の数も増加することを発見しました。バイオ炭が熱帯雨林の苗木の成長に役立つかどうかは、これまでほとんど明らかになっていませんでした。
ペルーの違法金鉱採掘の中心地であるマードレ・デ・ディオス県を拠点に行われた実験には、Guazuma crinitaとTerminalia amazoniaと呼ばれる、成長が速く、しばしば木材として用いられる2種類の樹木が用いられました。シルマン氏によると、苗木の成長にとっては、最初に植樹されてから数ヶ月を生き延びられるかどうかが勝負なのだそうです。