Point
■太陽系内に存在する「彗星」は、すべて同じ場所で誕生したとされる新説が発表される
■既知の彗星14個を分析したところ、太陽系初期の「原始惑星円盤」の中のある領域で生成された可能性が高い
■その領域は摂氏マイナス250度ほどと推測されており、ほぼすべての物質が氷へと変化する温度である
母なる円盤。
オランダ・ライデン大学の研究チームが、すでに知られている14の彗星に化学組成を調べるモデルを適応したところ、すべて同じ一つのパターンに帰属することが判明しました。
そのパターンによると彗星は、まだ若い太陽の周囲にあった「原始惑星円盤」の中のある領域内で形成されたというのです。
さらに彗星の一部が形成途中の地球に衝突したことで、地上に生命誕生の鍵となる有機物質が作られた可能性もあります。彗星の謎を調査することで、地球における生命誕生の秘密も解明されるかもしれません。
研究は、7月25日付けで「arXiv」に掲載されています。
https://arxiv.org/abs/1907.11255
彗星のふるさとは「円盤」の中
彗星は、氷やチリ、小さな岩石状の粒子で出来ており、太陽系のいたるところを飛翔しています。太陽に近づいた彗星の一部が熱によって蒸発すると、そのガスやチリが夜空に輝く流れ星となります。
そして今回、既知の彗星14個を調査したところ、そのすべてが組成は異なるものの、同じ物質で出来ていることが判明しました。そこから彗星がすべて同じルーツを持つのではないかという仮説が浮上したのです。
研究主任のクリスチャン・アイストラップ氏は「14の彗星はすべて、若い太陽を囲む原始惑星円盤のある領域で誕生した可能性が高い」と話します。原始惑星円盤とは、太陽系初期に太陽を囲んでいたガスやチリからなる巨大な円盤で、そこから恒星や惑星が誕生しました。
彗星が誕生したとされる領域は、円盤の中では太陽側に近いものの、太陽の核からは比較的遠くに離れた寒い場所となっています。アイストラップ氏によると、この領域の温度はおよそ21〜28ケルビンあたりで変動しており、摂氏に換算するとマイナス250度ほどと推測されています。
この温度は、ほぼすべての化学物質が氷となる温度であり、円盤内の一酸化炭素が氷に変わって彗星が作られているとのこと。さらに、氷に変わる期間は10万年〜100万年と時間幅があり、これが彗星の組成が異なる原因と考えられているのです。