
Point
■木のセルロース繊維と、クモの糸に含まれるシルクタンパク質を掛け合わせることで、新素材の開発に成功
■丈夫さと弾力性を兼ね備え、プラスチックに代わる材料として医療・織物・包装などの他分野で活用可能
■生分解性があるため、マイクロプラスチックがもたらすような自然破壊に繋がらない
強度と伸展性の両立は、材料工学の分野における大きな課題の1つです。通常、強度が増せば伸展性は失われ、伸展性を求めるほどに強度は損なわれるからです。
アールト大学(フィンランド)とVTTフィンランド技術研究センター社の研究チームが、自然からあるインスピレーションを得てこの難題の解決に成功しました。用いられたのは、木のセルロース繊維と、クモの糸に含まれるシルクタンパク質です。
丈夫さと弾力性を兼ね備えたこの材料は、将来的にプラスチックに代わる素材として、医療器具や外科手術用のファイバーとしてだけでなく、織物や包装の材料としても活用が期待できます。
論文は、雑誌「Science Advances」に掲載されています。
https://advances.sciencemag.org/content/5/9/eaaw2541
セルロースの網目にスパイダーシルク粘性マトリックスを浸透
セルロースとシルクの長所は、プラスチックと違って生分解性があるため、マイクロプラスチックがもたらすような自然破壊に繋がらないことです。

研究チームは、カバノキのパルプをセルロースナノフィブリル(ナノ繊維状構造をもつ物質)に分解し、硬い土台の上に並べ、セルロースの網目を作りました。そこへ、柔軟性に富み、散逸エネルギーを持つスパイダーシルク粘性マトリックスを浸透させることで、強度と伸展性が共存する新素材が誕生しました。