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金星はかつて地球と変わらない惑星だった? 新事実がシミュレーションから明らかに

2019.09.24 Tuesday

海のあった古代の金星のイメージ。/Credits: NASA

Point

■金星はかつて液体の水を持ち、30億年に渡って地球同様の温帯な環境の惑星だった可能性が出てきた

■これまでの観測データを元にシミュレーションを行ったところ、金星は20℃から50℃の気温を安定して維持可能なことがわかった

■金星は約7億年前に、地殻から大量に二酸化炭素が放出されたために現在の環境になったと考えられ、公転軌道が太陽に近いために液体の水は持てないという定説は否定された

マントル深部に40億年以上手付かず状態である大陸サイズの岩体がある

金星といえば、地表気温が462℃もあり、大気圧は地球の90倍と地獄のような環境であることが知られています。

しかしそんな金星が、かつては地球とほとんど変わらない環境であった可能性が浮上したのです。

これまでの金星の観測データを元に行われたシミュレーションでは、金星は30億年間に渡って安定した温帯気候であったと考えられ、水深数100メートル程度の浅い海を持つことも可能だったというのです。

この研究は、NASAゴダード宇宙科学研究所の研究者により、スイスのジュネーブで開催された2019年欧州惑星科学会議にて、9月20日に発表されました。

A view to the possible habitability of ancient Venus over three billion years
https://meetingorganizer.copernicus.org/EPSC-DPS2019/EPSC-DPS2019-1846-1.pdf/

金星の歴史

マゼランミッションにより撮影された金星/Credit: NASA/JPL

40年前金星の調査を行ったNASAの探査機パイオニアは、金星にかつて浅い海が存在した可能性を見つけ出しました。

しかし、金星の公転軌道は太陽に近いために、地球の2倍近い太陽放射に晒されており、液体の水を持つことは不可能だろうというのが、多くの科学者たちの一致した見解でした。

今回の研究者たちは、こうした問題に対して金星の地形データを元に、5つのパターンで海に覆われた状態を想定し、これまでの観測データから太陽放射の変化、大気組成の変化などを考慮した3次元大気循環モデルの中で、金星の環境がどのように変化するかをシミュレーションしたのです。

金星は約42億年前に誕生したと考えられています。形成直後の金星は、非常に高温で有害ガスに満ちていました。しかし、その後数億年で急速な冷却が行われ、大気を支配していた大量の二酸化炭素やメタンは、地球同様岩石に吸収されて地殻の奥深くに閉じ込められたといいます。

その結果生まれた金星の環境は、地球とよく似た微量な二酸化炭素とメタンや窒素による大気組成になり、5つのシミュレーション全てにおいて、およそ30億年に渡って20℃から50℃の気温を維持することができるとわかりました。この気温ならば水を液体のまま維持することも可能です。

金星の環境が現在のような高温高圧に激変したのは、およそ7億年前と考えられています。

7億年前金星には非常に大規模な火山活動が起こり、湧き上がったマグマから二酸化炭素が大量に放出されました。地表で固まったマグマは二酸化炭素の再吸収を阻害したため、この放出された二酸化炭素はそのまま大気中に留まることになったのです。

こうした出来事は、地球上でも過去に発生していたといわれています。2億5千万年前、シベリア・トラップと呼ばれる玄武岩の巨大な台地を形成した大規模な火山噴火がそれにあたります。この時、200万年近く大規模な火山活動が続き、地球の大量絶命イベントに繋がったのです。

シベリア・トラップ/Credit:Nature ダイジェスト/S.FOMINE/GLOBAL LOOK/CORBIS

ただ、金星で起こったイベントは、地球のものを遥かに凌駕する規模でした。このガス放出イベントで、金星の地表の80%近くが入れ替わり、惑星を現在の地獄のような環境へ激変させたのです。

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