Point
■地球から10億光年の場所で、衝突コースにある3つの「超大質量ブラックホール」が発見される
■ペアのブラックホールが観測された事例はあるが、トリオは極めて稀であるとのこと
■現時点で、3つは互いに1万〜3万光年の距離にあり、衝突すれば膨大な放射エネルギーを発することが予測される
NASAは、26日、超大質量ブラックホールを中心に持つ3つの銀河が衝突コースにあることを発表しました。
観測を行なったジョージ・メイソン大学によると、3つのブラックホールは、地球から「かに座」方向に約10億光年離れた場所に位置しているとのこと。
研究主任のRyan Pfeifle教授は「ペアのブラックホールが発見された例はあるが、トリオは極めてまれだ」と話しています。今回の発見は、3つのブラックホールの衝突プロセスを解明する貴重なものとなるでしょう。
論文のプレプリント版は、「arXiv」上に掲載されています。(正式論文は「The Astrophysical Journal」に掲載予定)
https://arxiv.org/abs/1908.01732
衝突後に莫大な「放射エネルギー」を発する
銀河は、中心部に必ず1つ「超大質量ブラックホール」を持っていると言われています。これは、普通のブラックホールとは規模が異なり、太陽の数百万倍〜数十億倍の質量に比敵することもあります。
ブラックホール同士が衝突する際は、膨大な量の恒星やガス、チリなどが消費されて、強力なエネルギー放射を発します。それが今回は3つなので、どれほどのエネルギーを放出するのか予測がつきません。
一方で今回の観測は、ブラックホールが周囲のガスやチリを吸収しながら移動しているため、姿が明瞭に見えず、画像化にも苦労したようです。
研究チームは、画像化のために、NASAが所有する3つの天体観測機を使用し、赤外線やX線データを組み合わせた作業を行なっています。
使用されたのは、「WISE(広域赤外線探査衛星)」「チャンドラX線観測衛星」「NuSTAR(=Nuclear Spectroscopic Telescope Array)」です。複数の波長を組み合わせることで、ついに上記のような画像化に成功しました。
また観測により、3つのブラックホールは現在時点で、互いに1万光年〜3万光年離れていることも判明しています。これからさらに距離を縮めていくようで、今後の観測に目が離せません。