Point
■ヒトの体内にいる細菌が、形を変えることで自らを抗生物質から見つかりにくくしていることが判明
■細胞壁を攻撃する抗生物質が働いている間に、「L型スイッチング」によって細胞壁を失うことで探知されにくくなる
■抗生物質が身体から排出されると、L型化していた細菌は再び元の姿に戻り、再感染をもたらす
ヒトの体内にいる細菌が、形を変えることで自らを抗生物質から見つかりにくくしていることが明らかになりました。
調査で、多くの抗生物質が共通してターゲットとする細菌が細胞壁を失うことを発見したのは、英ニューカッスル大学の研究チームです。細胞壁を失っても生存できる「L型スイッチング」の技を備えた細菌についての論文が、雑誌「Nature Comminications」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41467-019-12359-3
抗生物質がやって来ると姿を変えて「かくれんぼ」
研究チームは、尿路感染症を患い、ペニシリンやその他の細胞壁をターゲットとする抗生物質による治療を受けている患者30名の身体を調べました。その結果、尿路感染症に関連する大腸菌、エンテロバクター、ブドウ球菌を含むさまざまな細菌のL型スイッチングが、29名に確認されました。
研究チームが2018年に発表した論文では、ヒトの免疫システムがL型スイッチングをある程度誘発することが示されていましたが、抗生物質による治療がさらに顕著な効果を持つことが分かったのは今回が初めてです。L型化した細菌は、細胞壁を持つ細菌に比べて脆弱ですが、一部は体内に隠れて生き延びることができます。