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中性子星同士の衝突で重元素が誕生していることが初めて観測される (2/2)

2019.10.24 Thursday

前ページ重元素の誕生

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中性子星同士の衝突

中性子星の衝突アニメーション。/Credit: NASA/Dana Berry

重元素が宇宙の一部に偏って存在するわけではなく、宇宙にまんべんなく存在していることを考えると、r過程は非常に巨大な爆発を伴う現象によって起こり、重元素を宇宙全体へ飛び散らせていると考えられます。

そうした条件にぴったりなのが中性子星の衝突なのです。

中性子星は中性子を主成分とした超高密度の天体です。これは非常に重いけれどブラックホールになるほど重くはない恒星が寿命を迎えた後に生まれます。

高密度の天体が衝突した場合、キロノヴァと呼ばれるとてつもない大爆発が起こります。中性子星同士の衝突は重元素を宇宙に生み出す丁度いい現象なのです。

けれど物理学では、理論上ありえそうな話であっても、実際観測で確かめられるまで実際の現象としては扱ってもらえません。中性子星の衝突というレアイベントは、そうそう観測できるものではなく、重元素誕生の原理を明らかにすることは難しい問題となっていたのです。

しかし、2017年8月、人類は観測技術の向上と熱意と幸運が重なってついに中性子星同士の衝突を捉えることに成功したのです。これは地球からおよそ1億3000光年の位置にある中性子連星GW170817で発生したもので、重力波検出器「LIGO」「Virgo」を始め、世界中の天文台で観測されました。

GW170817の中性子星合体を可視光観測したすばる望遠鏡HSCの画像。明るい輝きが減光して近赤外線へと移行する様子が撮影されている。/Credit:国立天文台/名古屋大学

ただ、このとき得られた観測データは、非常にスペクトルが複雑であり、さらに必要な知識が不足していたため、解析には多くの時間を必要としました。

元素は光の決まった波長を吸収します。そのため科学者は波長スペクトルを解析することで、どの波長がどの程度吸収されたかを調査し、そこに現れた元素を特定することができます。

しかし重元素のスペクトルについては、この観測直後はまだ人類の知識が不完全でした。

この現象で生成された元素を特定するために、研究者たちは観測されたスペクトルをモデル化し、それを理解するための研究から始めたのです。

こうした研究の成果によって、この中性子星合体のイベントからは地球質量の5倍に相当する大量のストロンチウムが生成されていたことが明らかとなったのです。

この事実は、中性子星の衝突が実際にr過程を起こして重元素を大量に生み出していることを意味しています。

長い間、天文学者たちの間で議論されてきた高速中性子捕獲過程(r過程)が中性子星の合体とやっと結びついたのです。

理論の中でしかなかった中性子星の衝突を実際に捉えて、何年もかけて解析する。宇宙の謎に迫る天文学者たちの執念は凄まじいものがあります。

宇宙の錬金術! 金やプラチナなど重い元素が生まれた謎に迫る

reference:sciencealert,phys/ written by KAIN

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