- ワシントン大学の学生が靴箱サイズのミニ衛星を作成し、2019年11月2日にISSへ打ち上げた
- これは改良により軽量なスラスターを積んだ通信衛星で、高速通信を可能にする
- こうした衛星の小型化、処理高速化は大型携帯電話からスマートフォンの進化に近いという
現在大学の研究室などでは、重さ数キログラム程度の、CubeSats(キューブサット)と呼ばれる小型衛星が製作され実験に使われています。
これは重さは数キログラム程度で、サイズも10センチ〜30センチメートル程度と非常に小型軽量です。
こうした小型の衛星には様々なメリットがあります。大量生産可能で、打ち上げも国際宇宙ステーションの貨物船に相乗りさせることができ、開発や打ち上げ、運用に関わるコストをとても小さく抑えることができます。
また気象観測についても数個の大型衛星をに頼るよりも、たくさんの小型衛星を使うことで、1つの地域をより詳細に観測することができるのです。
しかし、こうした衛星はそのサイズのために推進力の制限という問題にも直面していました。
ワシントン大学の学生たちは、こうした問題を改良した画期的な新しい小型衛星の開発を行い、今月宇宙への打ち上げに成功しました。これは軌道変更可能な米国初の小型衛星の1つになるといいます。
軌道変更できる小型高速通信衛星
今回開発された小型衛星は「HuskySat-1」と名付けられています。これは重さ3キログラム、大きさは30センチメートル程度で靴箱ていどの大きさだと言います。
小型衛星の最大の問題点が、軌道を変更できないということです。これはサイズの問題でスラスターを搭載できないことが理由です。
この問題を解決するべくこのプロジェクトでは、ワシントン大学の学生60人以上が参加して、のべ25000時間を費やして新しい技術を開発しました。
それは固体硫黄を火花によって気化させることで推進力を生み出すという、可動部品を使わない新しいスラスターです。
このスラスターは衛星を軽く揺らす程度の力しかなく、宇宙を航行するような能力は持ちません。しかし軌道上の衛星を操作するには十分な力を発揮します。
小型とは言っても、この衛星は様々なサブシステムに分割されています。それぞれの部品は独立していて簡単に開発できるよう設計されていて大量生産に対応しているといいます。
この小型衛星は通信衛星で、24GHzの高周波Kバンドという帯域で非常に高い頻度でデータ通信を行うシステムを搭載しています。今回の打ち上げはこの機能を確かめるための実験でもあり、衛星からのデータ通信と操作のためのデータ送信を行う予定です。
衛星にはソニー製のカメラも積んであるそうで、宇宙から見た地球の映像を送信できるそうです。
打ち上げは2019年11月2日にバージニア州沿岸にある米航空宇宙局 (NASA)の施設から行われました。もちろん単独の打ち上げではありません。国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給とゴミ回収を目的に打ち上げられる貨物船に相乗りさせてもらい実現しました。
現在「HuskySat-1」はISSに停泊中で、2020年初頭に展開予定ということです。展開時には衛星はバネ付きの展開装置で軌道へと送り出されます。
この衛生は94分で地球を1周し、約3年半稼働すると言います。役目を終えると高度を落とし大気圏で燃え尽きます。小型衛星はこうした運用で、宇宙にデブリを残さない配慮もされています。
学生たち主導で開発された衛星ですが、これは画期的なものだといいます。
重さ約83キログラムあったソ連のスプートニク1号から始まった人工衛星が、重さ約3キログラム程度の高性能小型衛星へと進歩する姿は、まるでレンガのようだった携帯電話が、ガラケーそしてスマートフォンへと技術進化する過程のようだと評価されています。
いずれ数千にも及ぶ小型衛星が軌道上を周り、地球上のインターネット通信から気象観測までをカバーして人類の生活を支えるようになっていくのだと言います。
人工衛星もスマートフォンの様に小型化の時代なんですね。