- 夜空で燃える火球と呼ばれる流星の中には、一旦地球の軌道に捕らわれるミニムーンが存在している
- ミニムーンは小さいため発見が難しいが、火球を調査することで形成や配置について知ることができる
- ミニムーンの研究が進めば、小惑星のサンプルを地球近傍で安価に入手できるようになる
夜空で時折観測される火球は、小惑星の欠片が地球へ飛来して大気圏で燃え尽きているものです。
こうした小惑星の欠片の中には、すぐに地球には落ちずに地球の軌道上に捕らわれて一時的な衛星になっているものがあります。これはミニムーンと呼ばれています。
JAXAの探査機はやぶさ2は、小惑星まで出かけて行き、表面を採掘してサンプルを手に帰還するという非常に困難なミッションを行っています。
しかし、もしこうしたミニムーンを補足できるならば、このミッションはもっとずっと安価で簡単に実現できる可能性があるのです。
ただ、ミニムーンは小さすぎるため基本的に補足できません。そこで、ミニムーンの火球が役立つかもしれないのです。火球はその速度や入射角でミニムーンによるものか判別することが可能です。
これを研究することで、小惑星の欠片が地球軌道に捕らわれミニムーンになるメカニズムや、どのような軌道で地球を周回しているかが解明できるかもしれないのです。
オーストラリアのカーティン大学の惑星科学者Patrick Shober率いる研究チームは、地球に落ちる火球の中にミニムーンが存在していることを確認し、ここからミニムーンの詳細を研究しようと試みています。
この研究は、10月19日付けで、天文学の学術雑誌『The Astronomical Journal.』に掲載されています。
https://doi.org/10.1073/pnas.1914273116
複雑な軌道で地球を回るミニムーン
ミニムーンはその名の通り、非常に小さな月の仲間です。
それは小惑星から剥離した欠片が地球軌道に捕らわれることで衛星となったもので、サイズは大きくとも1メートル程度、小さいものは60センチメートル程度しかありません。
そのため、観測により探知することが難しく、また月や太陽の重力の影響を受けやすいため綺麗な円形の軌道で動きません。
ハワイ大学などの天文学者チームが2012年に行ったスーパーコンピューターによるシミュレーションでは、ミニムーンが非常に複雑な経路で地球を周回し、太陽重力に捕らわれて離脱していく様子が示されています。
わずか1メートル程度で、こんな軌道を描く物質を捉えるというのは、確かに簡単なことではないとわかります。
このため、ミニムーンは多くの研究者が関心を寄せながらも、そのほとんどが謎に包まれたままなのです。