- 探査機『パーカー・ソーラー・プローブ』は、人類初となる太陽に接近した調査を実行している
- 現在探査機は、計画された24の内3つ軌道調査を完了させており、これを元に4つの新しい論文が発表されている
- この調査からは、太陽近傍で磁場がよじれ太陽風が反転して吹いている様子など、新たな情報が明らかとなっている
太陽は光速に近い速さで大量の粒子を放出しています。
太陽から放たれる磁化された物質の雲は、集めれば10億トンにも及ぶと言われます。
これは太陽風と呼ばれ、その活動の全てが地球に影響を及ぼしています。また、衛星や宇宙飛行士の活動にも有害な影響を与える場合があります。
探査機『パーカー・ソーラー・プローブ』は、人類史上初めてもっとも太陽に接近してそんな宇宙の気象現象といえる、太陽風の振る舞いを調査しています。
探査機は24の軌道を回って太陽大気圏コロナの調査を行う計画で、現在3つの軌道による調査を完了していますが、これだけでも太陽に関する知識を大きく変えるデータが得られています。
この調査報告はNASAのサイト上で、12月5日に特集されていて、関連する論文は2019年12月4日付の『Nature』に掲載されます。
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/nasas-parker-solar-probe-sheds-new-light-on-the-sun
太陽風の複雑な挙動
探査機『パーカー・ソーラー・プローブ』は太陽の大気圏を調査しています。
太陽の大気ってなんぞや? と思う人もいるかもしれませんが、太陽の周囲はコロナという大気が包んでいます。地球の大気は気体ですが、太陽の場合、周囲の大気はプラズマと呼ばれる状態になっています。
気体は分子がバラバラになって飛んでいる状態を指しますが、プラズマは気体よりさらに物質がバラバラになった高熱の状態を指します。ここでは電子さえバラけてしまっているのです。
負の電荷を帯びた電子が飛び交うと、そこには電場と磁場が発生します。太陽は常に、この帯電した粒子に包まれているのです。
太陽風は、そんなプラズマのガスが宇宙へ吹き出したものです。地球から見た場合、これは比較的均一に揃ったプラズマの流れに見えます。
しかし、それは太陽から1億4千万キロメートル以上も移動した後の状態に過ぎません。太陽がこのプラズマをどのように太陽風として吹き出しているのかという情報は、このときすでに失われています。
探査機は太陽から約2400万キロメートルの距離まで接近し、太陽近傍の太陽風の状態を調査しました。そのデータを見たとき、研究者たちはあまりの複雑さに驚いたと語っています。
太陽風は全く安定せず、ときには反転する動きまで見せていたのです。これは「スイッチバック」と呼ばれています。太陽から吹き出したプラズマが、逆太陽に向かって流れたりしていたのです。
プラズマの帯電した粒子は基本的に太陽の磁力線に沿って移動します。それが突然反転して流れたということは、単に探査機が逆向きの別の磁力線に出会ったということでは説明できません。
これは太陽周辺では磁場がよじれていて、局所的な擾乱を起こしていることを示唆しています。
これは恒星がどのようにエネルギーを放出しているかの基本的なプロセスの理解や、宇宙の天候を理解するために役立つと考えられています。このプロセスは、今後さらに太陽へ近づいての観測により、詳細に研究されることになります。