真空の量子のゆらぎ カシミール効果
カシミール効果とは、完全な真空中に置いた二枚の金属板の隙間を非常に狭くすると、なぜか両者がくっつくような引力が生じるというものです。
何もない真空で、何故そんなことが起きるのでしょう?
実は量子力学では、真空がまったくの無の空間であるとは考えられていません。真空中では常に物質と反物質が対生成と対消滅を繰り返していると考えられているのです。この現象は量子のゆらぎと呼ばれています。
真空中でその様な現象が発生すると、金属板の隙間を狭めたときに、隙間で起きるゆらぎより、外側で起きるゆらぎの方が大きい状態になり、その圧力差によって2つの金属板が引き合うような動きを見せるのです。
このことから、物質の熱を伝達するフォノンも、量子のゆらぎによって真空中を伝達する可能性があると考えられたのです。しかし、この効果は非常に繊細なものであるため、これまで実験によって確認されたことはありませんでした。
今回の実験は、量子のゆらぎによってフォノンが真空中を伝わることを証明するとともに、この世界に真に空の状態が存在しないことも証明したのです。
フォノンが真空中を伝わったというこの実験成果は、量子のゆらぎによって音も真空中を伝わる可能性を示唆しています。
真空中では常に物質と反物質が対生成と対消滅を繰り返している。そんな量子力学の描く不思議な世界は、こんな形でも実験によって証明されているのです。