- 恐竜を絶滅させたと言われる隕石の衝突以前に、地球大気は水銀に冒されていた可能性が高い
- 大規模な火山噴火から発生した水銀が、海や大気に浸透し、生物たちを死滅させたと考えられる
恐竜の絶滅に関して、新たな説が浮上しました。
これまで恐竜の絶滅理由として有力だったのは、およそ6600万年前、地球に衝突したチクシュルーブ隕石が原因だとする説です。
ところがアメリカ・ミシガン大学により、「隕石の衝突以前に地球大気が水銀中毒に冒されていた」という研究が発表されました。
隕石の襲来とは別に、地球にはすでにガタが来ていたのかも知れません。
研究の詳細は、12月16日付けで「Nature Communications」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41467-019-13366-0
火山の噴火により「水銀」が急増?
研究チームは、南極、アラスカ、アラバマ、カリフォルニア、ワシントン、アルゼンチン、インド、リビア、スウェーデンにて貝殻を採取し、そこに含まれる二酸化炭素と水銀の量を調べました。
貝殻は、白亜紀(約1億4500万年前〜6600万年前)後期、更新世(約258万年前〜約1万年前)、現代の3つの時代に区分されています。
その結果、恐竜が絶滅した年代(約6600万年前)の少なくとも25万年前に、二酸化炭素と水銀レベルが増加しており、地球で急激な温暖化が起きていたことが特定されました。
偶然にもこの時期は大規模の火山噴火が起きたことが分かっており、その名残がインド西部の「デカン・トラップ」として残っています。
重要なのは、有害な水銀の発生原因として、地球上で最も大きなものが「火山噴火」だということです。
研究チームのKyle Meyer氏は、次のような仮説を立てています。
まず、噴火から発生した水銀が海に混入し、海中の有機物と激しく反応します。それをプランクトンが食べ、またそのプランクトンを貝類などの軟体動物が食べると、貝殻に水銀が蓄積していきます。
そしてその水銀が、海底の土中や海上に放たれることで大気を汚染。こうして水銀が食物連鎖や大気汚染を通して、地球上の生物を蝕んでいったというわけです。
研究チームは、デカン・トラップを作った大規模の火山噴火が、7000万年〜6800万年の間に複数回起こったと予測します。それによる二酸化炭素および水銀の急増が、その後の地球環境に大変動を引き起こしたのでしょう。
一方で、Meyer氏は「水銀の急騰が、恐竜の絶滅を推進したと結論するのは早急だ」とも指摘しています。
水銀で弱っているところに、隕石衝突が追い打ちをかけたとすれば、恐竜はかなり悲惨な運命をたどったのかも知れません。