超過酷な金星の環境
太陽系で一番暑い
もっとも太陽に近い、水星が一番暑いのでは?と思ってしまいそうですが、実は違います。
確かに水星の地表は太陽の光があたる「昼」の地表は最大約420度にあがりますが、あたっていない「夜」は最低約-180度にもなる極寒です。なので、平均では約179度。
いっぽう、金星は二酸化炭素を主成分とする、厚い大気に覆われています。二酸化炭素といえば、温暖化ガスのひとつ。
温室効果によって、昼も夜も変わらずずっと「暑い」んです。地表の温度は約460度にもなるそう。
深海レベルの気圧
金星の地表は90気圧もあります。水深900mの深海と考えると、大抵のものはぺしゃんこに。
そういえば、昔図鑑で見た「金星人」も、金星に人類が住む予想図も、雲の上に浮かんでいる設定でしたね。
上空だと気圧が低いので、ちょうどいい場所でという意味でしょうが、気圧以外にも過酷なので、そこまでして金星に住まなくていいのではと子ども心に感じました。
大気の上層に強風が吹き荒れる
金星の大気の上層では、秒速100mもの風が吹いています。金星をたったの100時間弱で1周してしまうほどの速さ。自転が速いならわかるけれど、遅いのに不思議です。
硫酸の厚い雲が覆っている
高度60㎞あたりに、濃い硫酸の雲が浮かび、惑星全体を覆っています。金星には火山がたくさんあり、火山ガスに含まれる硫黄化合物が硫酸のもとになったからというのが一説です。また、金星が非常に明るいのは、太陽光の80%近くが、この雲によって跳ね返されるからです。
金星は、木星や土星と異なり、岩石の地表がある惑星なのに、火星探査機で見られるようなローバーが地表を練り歩いて、写真を送ってくる話は聞かないですよね。
これだけ着陸するのにも、地表に降りたあとも過酷な状況なら、納得な話。
実際のところ、1985年にソビエト時代の探査機Vega2号が金星の地表にランダーを送り込んだのですが、たったの56分しかデータを送信できませんでした。近くても遠い、謎につつまれた星と言えそうです。
ただ、技術探査の技術も発展してきています。周回軌道からでもヨーロッパの「ヴィーナス・エクスプレス」は大気や地表面の化学組成を、日本の「あかつき」は大気の流体運動をメインに調査し、新しいことがわかってきています。
金星は太陽系の中で唯一、地球とほぼ同じ大きさと質量を持っていて、地球と同時期に似たような姿で誕生したとされる星です。金星の研究は、なぜ地球が長期間海を維持でき、生命があふれる星になったのかという謎を解き明かすカギになると期待されており、これからも注目したい惑星です。