- 社会不安障害(SAD)を抱く人は、相手の表情をネガティブに受け取りやすいことが実証される
- 実験では、SADレベルの高い人ほど、表情のネガティブ変化により敏感になることが判明
表情は、相手の心を読み取る有力な手がかりです。
バル=イラン大学(イスラエル)の研究により、社会的不安レベルの高い人ほど、相手の表情をネガティブに解釈することが実証されました。
特に、社会不安障害(SAD)を抱えている人は、ネガティブな結論が出そうな場面では、極端に不安や恐怖を抱きます。言われてみると当たり前かもしれませんが、「無表情な人」を必要以上に恐れる人は、もしかしたら自分の中に原因がある可能性もあるでしょう。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0005791618302477
SADは「ネガティブ変化」により敏感になる
研究チームは、342名の被験者(平均年齢35歳)を募り、表情変化への認知レベルをテストしました。
実験では、「モーフィング・ビデオ」という表情が次第に変化していく動画を使っています。具体的には、喜び(ポジティブ)から嫌悪(ネガティブ)へ、ネガティブからポジティブへの2パターンで行なっています。
被験者には、表情が変わったと思うところでビデオを一時停止してもらいました。
さらに、結果を強固なものにするため、被験者に社会的排斥の感情を抱かせる「サイバーボール実験」を先に行いました。
これはプレイヤー3名が、コンピューター上で互いにボールをパスし合うゲームで、3名のうち1人が被験者で、後の2名はコンピューターが操作します。ここで被験者に回ってくるボールの回数は、「受容条件」と「排斥条件」で異なります。
受容条件では、被験者にも均等にボールを回しますが、排斥条件では、被験者にほとんどボールを回さず、仲間はずれの状態を作ります。排斥条件でプレイした被験者は、受容条件よりも社会的排斥(疎外感)を抱きやすくなるというわけです。
実験は、サイバーボール実験→モーフィングビデオの順で実施されます。また、試験前には、被験者それぞれのSADレベルを測定するアンケート調査を行いました。
その結果、疎外感に晒されたSADレベルの高い人は、ポジティブからネガティブへの表情変化に極めて敏感に反応することが分かりました。反対に、ネガティブからポジティブな表情への変化の際は、先と比べて反応が遅いことも判明しています。
他方で、SADレベルの低い人は、高い人よりネガティブからポジティブへの変化に敏感でした。この結果は、SADを抱く人が、表情の変化にポジティブな意味を汲み取ることができないことを示しています。
SADを抱く人にとっては、社会のあらゆる場面がネガティブに写ってしまいます。その場合は、ネガティブな結論を急がずに適切な判断ができるよう、より多くの情報を集めることが大切です。