- 遺伝子編集により、従来よりも短期間で実が成り、ブドウの束のように育つ新種のトマトが開発される
- この技術を使うことで、温暖化で荒廃が進む農作地域に代わり、都市部での作物栽培が可能になる
深刻化する地球温暖化の問題は、農業にも及んでいます。現在、世界では5億人以上が、気候変動や森林破壊、耕作可能地の過剰使用により、荒廃した土地に住んでいるのです。
すでに悲鳴を上げはじめている農作地域を救うためにも、作物栽培の負担の一部を都市部に移すことが期待されています。
そんな折、米国のコールド・スプリング・ハーバー研究所により、宇宙船内や都市部での栽培に適した新種のトマトが開発されました。このトマトは、遺伝子編集により、成長期間が圧倒的に短く、ブドウの束のように大量の実が成ります。
そのため、栽培スペースが制限される都市部にはうってつけの技術となるでしょう。
https://www.cshl.edu/a-new-tomato-ideal-for-urban-gardens-and-even-outer-space/
遺伝子編集でトマトが激変
本研究の目的は「農作地に不向きな大都市や宇宙空間(船内)でも育つ幅広い種類の作物をエンジニアリングすること」と研究主任のザック・リップマン氏は説明します。
その第一号となるのが、この新種のトマトです。
チームはまず、トマトが持つ2つの遺伝子「SELF PRUNING」と「SP5G 」を遺伝子編集しました。これらは、トマトの生殖とサイズをコントロールする遺伝子であり、茎や葉がすばやく育って、実を咲かせるのを遅延する働きがあります。
これらを編集することにより、わずか40日以内で実を持たせることに成功しました。
しかし、まだトマト同士のスペースが広く、多くの実を持っていません。そこでチームは、3つ目の遺伝子「SIER」を編集することで、茎の長さを短くすることに成功。こうして、実がところ狭しと詰まった束のようなトマトが実現したのです(画像右)。
都市部での農作スペースは、かなり制限されるため、一度に大量の実が成り、収穫時期の回転も早いこの手法は、大きなアドバンテージとなります。さらに、環境に優しいことも特筆すべき点です。遺伝子組み換えを用いれば、農薬や肥料の過剰使用が必要ないため、農地を傷めることもありません。
この研究には、NASAも関心を寄せており、狭い宇宙船内での作物栽培も現実味を帯びています。環境の変化に伴い、農業のあり方も大きく進化しているようです。