
- 抗がん剤じゃない身近な薬にも、がん細胞を殺す効果があることがわかった
- 未知の仕組みを解明することで、全く新しい抗がん剤を作れる可能性がある
製薬業界では、目的とする以外の効果が認められ、新たな薬となるケースが多数あります。
例えば、元は狭心症の治療薬だった「バイアグラ」は、肝心の狭心症に対する効果は微々たるものでした。
しかし患者が返却を渋り、隠れて家に持って帰っていたことから例の効果が明らかになり、現在は大いに活躍しています。
今回研究者たちが確かめたのが、既存の薬の抗がん剤としての効果です。実験の結果、新たに約50種類の薬にがん細胞を殺す効果があることがわかりました。
研究はMITとハーバード大学の研究者らによって行われ、1月20日に学術雑誌「Nature Cancer 」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s43018-019-0018-6
あらゆる既存薬を、がん細胞に与えてみる

研究者はまず、既存薬の隠れた抗がん作用を確かめるため、研究者は頭痛薬から便秘薬まで4518種類にも及ぶ既存の薬を用意しました。
そして対象となるがん細胞には、肺がん、前立腺がん、子宮がんなど、知られているほぼ全てのがんのタイプを網羅した578種類が揃えられました。
あとは薬とがん細胞を混ぜて、がん細胞が死ぬかどうかを確かめるだけです。
しかし4518種類の薬を578種類のがん細胞に一つ一つ試す場合、作業回数は単純に考えて260万回にも及び、現実的ではありません。
そこで研究者は25種類のがん細胞を配置したチップを複数作り、1つの薬の効果を一度に試せる「分子バーコード法」と呼ばれる方法を使いました。
チップには薬によってがん細胞が死んだ場合、細胞から流れ出る遺伝物質(RNA)を感知する仕組みがあり、どの薬によって、どのがんを、どれだけ殺せたのかを素早く確かめることができたのです。