- 地球から約670光年の場所に、観測史上最も高温の「ホット・ジュピター」が発見される
- 表面温度は最高4300度に達しており、大気中の水素が分子状態を保てず、原子に分離していることが判明
木星と同等のサイズを持ちながら、主星となる恒星との距離が非常に近い太陽系外惑星を「ホット・ジュピター」と呼びます。
主星にかなり近い位置を公転するため、表面温度はかなりの高温です。
今回シカゴ大学の研究により、観測史上最も高温なホットジュピターが特定されました。
その温度は、惑星の大気中にある水素分子が原子に分離してしまうほどであるとのこと。
研究の詳細は、1月7日付けで「The Astrophysical Journal」に掲載されました。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ab5b09
暑すぎて水素が分子状態を保てない
問題のホットジュピターは「KELT-9b」と命名されており、初めて観測されたのは2017年のことでした。今回の研究では、NASAの宇宙望遠鏡「スピッツァー」を用いて、KELT-9bの表面温度や大気の動きなどを分析しています。
KELT-9bは、地球から「はくちょう座」の方角に約670光年離れた場所にあり、質量は木星の3倍近くに及びます。主星となる恒星「KELT-9」は、太陽の約2.5倍の質量を誇り、KELT-9bは、その周囲をわずか1日半で公転しているようです。
つまり、KELT-9bの1年は36時間ということになります。
公転周期や主星との距離の短さを考慮した上で、研究主任のメーガン・マンスフィールド氏は「KELT-9bは潮汐ロックされた状態にある」と指摘します。
潮汐ロックとは、惑星の自転周期と公転周期が一致する現象のことです。この状態にある惑星は、主星に向けて常に同じ面を向けて公転します。月と地球の関係がそれに当たります。
これにより、KELT-9bは、昼側と夜側が常に固定された状態となります。
そして調査の結果、昼側の表面温度は約4300度、夜側でも約2300度を上回ることが判明しました。温度の低い恒星で3000〜6000度あるので、KELT-9bの表面温度は恒星に匹敵します。
さらに、その高温のせいで、KELT-9bの大気中にある水素分子が分子の状態を保てず、原子に分離していることが分かりました。分離した水素原子は、夜側の方に移動して温度が低下すると、再び分子に結合し、またひつ側に戻ると分離します。
どうやらKELT-9bの水素は、2000度近い温度差のある昼と夜の間で循環しているようです。