- 都市部では昆虫の多様性や生息数が減少しているが、一方で恩恵を得ている種も存在している
- その1つがミツバチで、花粉媒介者のハチが活発なために、都市部では田舎よりも花の受粉率が高い
- ミツバチは農薬の影響に敏感で、営巣に適した環境も都市部の方が多いことが原因と考えられる
田舎と都市を比較した場合、明らかに自然が豊かなのは田舎です。
しかし、新しい研究では、顕花植物(花を咲かせて身を結ぶ種子植物)の受粉率を調べた結果、明らかに田舎より都市部の方が優れているという意外な結果を得ました。
その原因は、主要な花粉媒介者であるミツバチ(特にマルハナバチ)が、田舎よりむしろ都市部の生活で恩恵を受けやすかったためだと結論付けられています。
一体何故、ミツバチは田舎より都市を好むのでしょうか?
この研究はドイツ総合生物多様性研究センター(iDiv)とマルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク(MLU)、及びヘルムホルツ環境研究センター(UFZ)の率いる研究チームにより発表され、オープンアクセスの学術雑誌『Nature Communications』に1月29日付けで掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41467-020-14496-6
都会育ちのミツバチ
研究チームが目指したのは、都市部と田舎で環境が昆虫に与える影響です。
特に植物の受粉など昆虫の提供する生態系へのサービスが、都市化の影響でどう変化しているか、ということでした。
研究はドイツの9つの大都市とその周辺にある農村地域で行われました。
調査されたのは、都心の公園や植物園、また農村地域の花が豊富な場所です。
ここで鉢植えに入れたアカツメクサ(主要な牧草)を利用して飛行昆虫の、1日の訪問数などを15分おきに記録し、また生産された種子のカウントなどを行いました。
結果、もっとも受粉に成功したのは都市部でした。ここでは田舎より頻繁に昆虫が花を訪れていました。特に重要なのはマルハナバチで花を訪れた4匹中3匹はマルハナバチでした。
田舎ではハエや蝶が非常に生息数が多く多様性も高いことが確認されましたが、この昆虫たちはアカツメクサの受粉にはほとんど貢献しませんでした
都市部でミツバチが多様性と生息数を確保している理由は、良好な営巣の機会が都市部に多く存在するためと研究者たちは考えています。
これは露出した土、枯れ木、壁の空洞などで、公園や庭園では顕花植物の種類が豊富なため、彼らの食料供給に有利な環境です。
一方、農村地域では、花畑や草原、森林、生垣などが多く、整備された農場ではミツバチの営巣に適した営巣地がありませんでした。また、マルハナバチは農薬の影響を受けやすいことも原因と考えられます。
都市は農薬を散布することはないため、マルハナバチには快適な環境なのです。
農地の方が受粉性能が一貫して劣悪であったことは、研究者にとってはショックな結果でした。