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ブラックホールの周辺は住めるのか?映画『インターステラー』を発端にした宇宙研究 (2/3)

2020.02.09 Sunday

前ページ研究者が触発された映画『インターステラー』

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ブラックホール周辺のハビタブルゾーン

地球上の大気温度は、大気を加熱する太陽エネルギーと、地球から宇宙空間へ放出されるエネルギーのバランスで成り立っています。

地球エネルギー収支。/Credit:NASA,Wikipedia Commons

Bakala氏は、そんな惑星の熱力学(thermodynamic)の観点から、今回の問題にアプローチしました。

生命の居住可能環境には、利用可能なエネルギー源(地球の場合は太陽)と廃熱の吸収源(冷えた宇宙空間)が必要です。

太陽の代わりにブラックホールが存在するという環境で、この条件はクリアできるのでしょうか?

インターステラーの場合、これが逆になっていました。

太陽に当たるブラックホールが冷たい熱吸収元であり、宇宙空間から熱源となるエネルギーとして宇宙マイクロ波背景放射(CMB)が来ているのです。

CMBは、ビッグバンの残光やこだまと表現される電波です。これはもともとビッグバンが放った強力な放射線でしたが、宇宙空間が膨張するに従って波長は引き伸ばされ、現在はただの電波となって漂っています。

このままでは熱源として利用はできません。

しかし、超大質量ブラックホールの周辺では、極端な重力によってCMBの波長は再び圧縮されて、太陽光の代わりになるような高エネルギーの放射線になっているのです。

「ブラックホール周辺の惑星にとってCMBは、ブラックホールの端にある明るい星のように見えるだろう」と研究者は話します。

しかし、この圧縮されたCMBから十分に強い光を受け取るためには、惑星がブラックホールの「事象の地平面」のかなり近くを公転する必要があります

当然「事象の地平面」を超えてしまえば惑星は粉々に砕かれてしまいます。

高重力により空間が滝壺のように歪んだ脱出不可能なポイントが事象の地平面。/Credit:pixabay

研究者が計算した結果、惑星が事象の地平面に接近しながら、安定した公転軌道を保つには、ブラックホールが非常に大きく、ほぼ光速で回転している必要がある、ということがわかりました。

「ほぼ光速度」とは光速度から1億分の1%未満しか速度が低下していない圏内を指しています。

またブラックホールが小さいと事象の地平面の外側でも、ブラックホール本体に近すぎるため、潮汐力の影響で惑星が引き裂かれてしまいます。

これは天の川銀河の中心にある、太陽質量の400万倍程度のブラックホールでは成立しません。

この惑星を破壊するような潮汐力の影響を、事象の地平面近くで受けないようにするためには、太陽質量の約1億6300万倍という極端なサイズが必要になります。

さらに、惑星内で生命が繁栄するには、ブラックホールの周囲がほぼ何もない平穏な空間でないといけません。

もし周囲に、多くのチリやガス、恒星が浮遊していれば、ブラックホールがそれらを吸い込んだ時に放出する大量の放射線により、惑星内の生命を死滅させてしまう恐れがあるのです。

次ページ現実的には無理がある…

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