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暗黒物質 vs 修正ニュートン力学!暗黒物質を含まない銀河形成シミュレーションが初めて実行される

2020.02.12 Wednesday

誕生から15億年後の宇宙のシミュレーション。/Credit: AG Kroupa/Uni Bonn
point
  • 暗黒物質がない宇宙での銀河形成シミュレーションが行われた
  • ここではニュートンの法則が限定的にしか作用しない、MOND理論が適用されている
  • 計算された銀河は、現在実際に観測されているものと非常によく似た形状をしている

現在の宇宙論で重要な鍵を握っているのが、観測できない謎の重力源「暗黒物質」です。

これは宇宙に見られる不均等な物質の分布や、銀河回転の問題を説明するために不可欠なものだと考えられています。

しかし、暗黒物質については決定的な証拠はまだ発見されておらず、やはりそんなものは存在しないのではないか、と考える科学者も多く存在しています。

そんな彼らが考える暗黒物質に変わる有望な理論の1つが、修正ニュートン力学(MOND)です。

これは、重力が今まで考えられていたものとは異なる振る舞いをしているのではないか、というかなり大胆な理論です。

そこで今回の研究チームが初めて実行したのは、暗黒物質がない修正ニュートン力学を適用した本格的な銀河形成シミュレーションです。

その結果は、見たところ現在私達が観測できる銀河の姿と非常によく似ていると言います。

果たして、現在の宇宙の形を作り上げたのは、暗黒物質なのでしょうか? それともただ私達が重力の性質を十分理解できていなかっただけなのでしょうか?

この論文は、ドイツのボン大学とフランスのストラスブール大学の研究チームより発表され、天文学の学術雑誌『the Astrophysical Journal』に掲載されます。現在は、プレプリントサーバー『arXiv』で論文全文が閲覧可能です。

The formation of exponential disk galaxies in MOND
https://arxiv.org/abs/2002.01941

暗黒物質 VS 修正ニュートン力学

掃天観測による160万個の銀河の天球上の分布。/Credit:2MASS

現在私達に見える宇宙は、ビックバン以降に物質が均等に分布しなかったことで形成されています。

密度の高い場所は周囲より強い重力を発生させ、それがガス雲を束ねて最終的に銀河を生み出したのです。

この原因となったのが暗黒物質です。

暗黒物質は冷たい粒子で構成されていて、熱による激しい運動は起こさないため、拡散せずに凝集しやすい性質を持っていたと考えられているのです。

また、暗黒物質は銀河の回転における不可解な謎も説明してくれます。

回転銀河は、非常に早く移動する場合があります。このとき計算上では、外側に存在する星は銀河から追い出されてしまうのです。

しかし、銀河は実際崩れることなく、全体が一様に回転しています。これを実現するためには、銀河の形をパテのように固めるための追加の重力源が必要だと考えられるのです。

この原因も暗黒物質で説明することができます。

しかし、それは本当なのでしょうか? 証拠となるものは未だに発見されていません。

存在しないものを延々と人類が探し求めているのだとしたら、それは不毛という他ありません。見えている物質だけで、すべて説明することはできないのでしょうか?

そこで登場した代替案が修正ニュートン力学(MOND:MODed Newtonian dynamics)です。

この場合に科学者が考えるのは、重力が私達の想定と異なる振る舞いをしているだけなのではないか? ということです。

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