- 音速を超える爆発を利用した回転式エンジンは、従来のジェットエンジンよりも効率的である
- 実験用エンジンの開発により、新エンジンの動力学が明らかになった
宇宙ロケットなどに利用されている従来のエンジンはジェット式です。しかし、燃費効率が悪く、様々な代替案が研究されてきました。
そこで登場したのが衝撃波を伴う爆轟を利用したデトネーションエンジンです。しかし、これは出力の安定性に大きな課題がありました。
その原因は、デトネーションエンジンのメカニズムについて、まだ正確に理解できていないためです。
新たな研究は、この問題点を洗い出すための実験用の回転デトネーションエンジンを開発し、エンジンの安定性を正確に調査する方法を提案しています。
この研究は、ワシントン大学のジェイムス・コック氏らの研究チームにより発表され、1月10日「Physical Review E」誌に掲載されています。
https://journals.aps.org/pre/abstract/10.1103/PhysRevE.101.013106
爆轟の衝撃波を利用した新エンジン
従来のジェットエンジンはエンジン内部で「爆発」を起こし、それを推進力としています。
ジェットエンジンの利用と共に、効率の良い新エンジンの開発も進められてきました。その1つがパルスデトネーションエンジン(pulse detonation engine)です。
パルスデトネーションエンジンの特徴は、名前の通り「爆轟(デトネーション)」です。
爆轟とは燃焼の一種。燃焼は、その速度によって名称と現象が変わります。焚火のようにゆっくりと燃えるものもあれば、爆発のように一瞬で燃えるものもあります。
爆発よりも燃焼速度が速くなることもあり、燃焼伝播が音速を超えた燃焼は「爆轟」と呼ばれます。
「爆発」と「爆轟」の大きな違いは、衝撃波の有無です。
「爆発」は素早く燃焼するだけで衝撃波はありませんが、「爆轟」になると音速を超える衝撃波を生み出します。
化学工場の爆発のように、一般的な認識では爆発も、離れた物を吹き飛ばしたり、建物のガラスを割る衝撃波を起こすイメージがありますが、それは正確には爆轟に分類されます。
衝撃波を伴う爆轟は、通常の爆発とは比較にならないほどの威力です。この力は推進力として活用できます。
従来のジェットエンジンは「爆発」を利用していますが、デトネーションエンジンは「爆轟」を利用したものです。
このデトネーションエンジンには、パルスデトネーションエンジンと、新しいタイプの回転デトネーションエンジン(rotating detonation engine)があります。
パルスデトネーションエンジンは、筒の中に「燃料を溜める」「爆轟させる」を繰り返します。大きなパワーが期待できますが、1サイクルを繰り返さないといけないため、爆轟に間隔が生じます。
対して、回転デトネーションエンジンは一度点火すると、爆轟が円を描くように起こります。燃料も爆轟の後を追うように補充されていくので、爆轟が途切れることがありません。
これは、継続的に爆轟による衝撃波が生まれるので、結果として非常に高い推進力が得られ、制御もしやすい将来性のある新エンジンと考えられています。