フクロウの飛行は空気の粘性抵抗を減少させる
では、空気の粘性の影響を受けやすい小型飛行体にとって、ベストな飛行法はどんなものでしょうか?
この点が、フクロウの滑空飛行の撮影によって解明されました。
前述したように、飛行機などの大型航空機において効率的とされていたのは、両翼のみに揚力が生成されている状態です。「2つの渦」しか発生しません。
しかしヘリウムガスの霧を充満させた中をフクロウに滑空させたところ、4つの渦が発生していました。両翼に加えて、尾羽根からも2つの渦が作られています。
つまり、両翼だけでなく、航空機ではタブーとされていた「尾羽根からも揚力を発生」させていたのです。
研究の結果、科学者たちは、フクロウが尾羽根の揚力を利用して粘性抵抗を減少させていることを発見しました。
フクロウは両翼だけでなく尾羽根にも揚力を発生させることで、フクロウの身体全体に揚力が均等に加わるよう調整していました。
そして、この時のフクロウが受ける粘性抵抗は、最小限に抑えられていたのです。
もちろん、尾羽根に揚力を発生させることで、粘性以外の抵抗は大きくなり、飛行も不安定になります。
しかし、粘性抵抗による影響があまりにも大きいので、フクロウは、他を犠牲にしてでも、この粘性抵抗の減少を優先しています。
この選択により、フクロウは総合的な抵抗値を減少させ、一番効率良く飛行することができていたのです。
巨大な航空機の発達は、科学者たちから小サイズの航空力学を遠ざけてきました。
しかし、近年ではドローンや小型飛行機の需要が高まっています。この点で、フクロウによる空気力学の発見は大きな役目を果たすでしょう。