大爆発の原因は?
この爆発は宇宙における火山噴火のように考えることができます。
研究者たちはこの火山にあたるものは、銀河団の持つ超大質量ブラックホールだと考えています。
ブラックホールは巨大な重力によって物質を引き込むという認識が一般的です。
すべてブラックホールの中へ落ちていくようにイメージされますが、実際は引き寄せた物質のほとんどは、ジェットと呼ばれる現象によって光速に近い勢いでブラックホールの垂直方向へ噴出されます。
ブラックホールジェットについては、現在も正確なメカニズムはわかっていませんが、ブラックホールの極方向に伸びる強力な磁力線が影響していると考えられています。
銀河団の中心となるような活動銀河核(超大質量ブラックホール)には、銀河すらが落下して吸い込まれることがあり、これが巨大なジェットを発生させます。
これが周囲のガスを吹き飛ばし、巨大な空洞を銀河団に生み出すのです。
しかし、今回観測された空洞はあまりに巨大で、たとえ活動銀河核のジェットと考えた場合でもエネルギーがまったく足りません。
そのため、X線観測でそれらしい痕跡を見つけたときも、天文学者たちは無視していました。
その後、電波望遠鏡による観測でも同様の空洞の存在が確認できたため、ここで空前絶後の爆発があったということが認められました。
ただ、この爆発の原因は容易にはわからないといいます。
銀河が活動銀河核へ落ちた場合でも、普通はそれにより発生するジェットで周囲のガスが吹き飛ばされてしまうため、ブラックホールはたちまち燃料不足に陥って活動を低下させます。
ここでは、なにかの要因によってブラックホールのジェットが途切れないように燃料を供給し続けた可能性があるのです。
ヒントとなりそうなのは、今回発見された空洞が片側にしか見られないということです。
通常ブラックホールジェットは2つの極方向に対称的に噴出されます。そのため対称的な空洞が生まれますが、今回見られる空洞の偏りは、ブラックホールの燃料供給に影響していた可能性が考えられます。
ですが、残念ながらこれ以上のことは、さらに多様な波長での観測によって情報を集めないことにはわからないようです。
宇宙には予想外の発見や出来事が未だに多く報告されてきますが、活動銀河核が起こす巨大な爆発さえ、人類が想定している限界を容易に越えるケースがあるようです。
これこそが宇宙の恐ろしくも、魅力的な部分なのです。