- 白亜紀大量絶滅の原因となった小惑星衝突について、環境激変の詳細が明らかにされた
- K-Pg境界から銀・銅の微粒子が大量に発見され、これは大規模な酸性雨があったことを示唆している
- 酸性雨が降ったという説はこれまでにもあったが、具体的な証拠が発見されたのは今回が初めて
地球ではこれまでに、ビッグファイブと呼ばれる5つの大規模な生物大量絶滅が起こっています。
その中で最後に起きたのが、約6600万年前に起きた恐竜を中心とした生物の大量絶滅です。
この原因は、小惑星の地球衝突だったと言われています。これは地質の調査からも明らかにされていることです。
小惑星の衝突は地球に様々な環境の激変をもたらしたと考えられています。
しかし、具体的に何が起きたかについては、推測の域を出ていません。なぜなら、こうした環境激変は極めて短期間に起こっており、地層にはその様子が記録されていないと考えられていたためです。
新しい研究は、この大量絶滅期に当たる白亜紀-古第三紀(K-Pg)境界の地層サンプルを、量子力学の研究などでよく耳する粒子加速器で分析しています。
その結果、世界で初めて、この時期に大規模な酸性雨が降り注いでいたという具体的な証拠を発見したのです。
この研究は、筑波大学・高知大学・京都大学、および海洋研究開発機構・日本原子力研究開発機構・量子科学技術研究開発機構・高輝度光科学研究センターの研究者らによる研究チームにより発表され、アメリカ地質学会によって発行される査読付き科学雑誌『Geological Society of America Bulletin』に2月5日付けで掲載されています。
https://doi.org/10.1130/B35403.1
最後の大量絶滅
地球では幾度も、生物の大量絶滅が起こっています。
人間が生きる現代も大量絶滅期なんじゃないの? という説もありますが、地質学的に最後の大量絶滅と考えられているのが、約6600万年前K-Pg境界で発見された生物の大量絶滅です。
これは一般に恐竜の絶滅として知られています。
ここでは生物種の実に70%以上、個体数でいうと99%近くが死滅したと言われています。
この原因となったのが、メキシコのユカタン半島に衝突した直径10kmにも及ぶ巨大隕石だと考えられています。
K-Pg境界では、隕石などに多く含まれるイリジウム(親鉄元素)が高濃度で検出されています。これは地表近くの岩石にはほとんどない元素のため、隕石落下の証拠とされています。
また、隕石の衝突による衝撃だけで大量絶滅が起きたとは考えにくいため、大量絶滅はこれに起因した地球環境の激変が原因だろうと考えられています。
その内容は、舞い上がった粉塵による太陽光の遮断、酸性雨、岩石が蒸発したことによる温暖化、紫外線透過などです。
ただ、これらの現象は非常に短時間で起きたため、その様子を地層の記録から見つけ出すことは難しいと考えられていました。
そのため、環境の激変については推測の域を出ず、具体的にどのような環境変化が起こったかの証拠は、これまで得られていなかったのです。