「鉄サビ」と光エネルギーで浄化と水素生成
新しい研究では、自然界に豊富に存在している「鉄」に注目し、鉄を原料としたオキシ水酸化鉄(FeOOH)、いわゆる「鉄サビ」を光触媒として機能させることに成功しました。
実験では、模擬汚染水としてメタノール水溶液が準備されました。
メタノール水溶液にオキシ水酸化鉄を入れ、水銀キセノンランプによる光を照射すると、光触媒反応が起こり水素が発生しました。
発生した水素の一部は、メタノールではなく水から発生したものでした。つまり、メタノールを分解して水素を取り出すだけでなく、水からも水素を生成しているのです。
水素が発生しやすい条件を調べたところ、溶液が酸性であるほど水素の発生量が多くなることも分かりました。
これらの結果から、「鉄サビ」が、光エネルギーによって模擬汚染水を浄化し、それに伴い水素を生成したと言えます。
光触媒としてポピュラーな酸化チタンと比較すると、有機化合物の分解に伴う水素生成量は25倍にもなっていました。
今回の研究成果の将来的な可能性について、勝又准教授は「オキシ水酸化鉄が可視光で同じような活性を示すように材料創製することで、太陽光と鉄サビで汚染された水を浄化し、安心・安全な水の確保が可能となるだろう。環境浄化とエネルギー生産を兼ね備えた材料開発の基となる研究だと考えている」と話しています。
このように、身近でありふれた物質から光触媒が発見され、研究が進んでいくなら、地球規模の環境・エネルギー問題の根本的な解決策の獲得につながるでしょう。