よりシャープで鮮明なブラックホール
ブラックホールの光の輪は、ただ曲げられて地球に届いたブラックホールから離れた光子と、非常にブラックホール近傍にあって何度も周回してから届いた光子が重なり合ったものです。
ブラックホール近傍で周回した光は、それだけはっきりとしたシャープなリングを作ります。
上は離れた位置で曲がった光をイメージした動画。広く拡散するのが、ぼんやりしたリングの原因です。
一方、ブラックホールの非常に近くに捕らわれた光は、その周りを周回してよりシャープなはっきりしたリングを映します。
画像のnは光子の周回数(厳密にはn/2周になる)を表しています。
以前に得られた画像のリングは、こうした複数の光の集積だったのです。もし、ブラックホールをより多く周回した光だけを取り出せれば、もっと鮮明でシャープなブラックホールのフォトンリングが得られるかもしれません。
そこからは、より正確なブラックホールの質量やスピン、形に関する情報が得られるはずです。
今回の研究はそうした、下部構造のリングを取り出す計算方法を提案しています。
ただ、より多くブラックホールを周回した光は非常に弱くなり、ほとんど見ることができない状態になります。
しかし、今回の研究では、干渉計と呼ばれるタイプの望遠鏡を使うと、この多く周回した光ははっきりした明確な信号として取り出すことができると説明しています。
この観測を実現させるには、非常に離れた2つの望遠鏡を使うことが有効です。具体的にはブラックホール撮影を成功させたイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)に宇宙望遠鏡を1つ追加するだけで十分です。
研究者はそのように語っています。
これまでは、理論家が抽象的なイメージの中で語ってきただけのブラックホールが、ついに実験科学になって、明確にデータ収集できる時代に突入しています。
新しい手法は、いずれもっと鮮明なブラックホールの姿を私たちに提供してくれるかもしれません。