- グッピーのオスは、兄弟の恋敵を追い払う習性を持つことが判明
- 兄弟の求愛を手助けすることで、自分と同じ遺伝子の繁殖成功に貢献している
フロリダ州立大学の研究により、グッピーのオスは、兄弟たちの「恋のキューピッド」をつとめることが判明しました。
グッピーの世界では、オスがメスにアピールしていると、他のオスがやってきて邪魔することがよくあります。
しかし、オスの兄弟たちは、弟や兄の邪魔をする恋のライバルを追い払うことで血縁者の繁殖を手助けしていたのです。
これまでの研究で、メスが近親交配を避けるために血縁認識(kin recognition)することは分かっていましたが、オスの血縁認識が繁殖プロセスに貢献していることが証明されたのは今回が初めてです。
研究の詳細は、3月16日付けで「Nature Ecology & Evolution」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41559-020-1152-3
兄弟を助けるのは「同じ遺伝子」を拡散するため?
グッピーのオスは、メスに好意を示す際、踊りのようなパフォーマンスを披露します。そこでメスが興味を持てば、カップル成立です。
しかし、他のオスが間に割って入ることがしばしばあります。そうなるとアピールは失敗し、反対に邪魔をしたオスの功績が認められ、意中の相手を横取りされることもあるのです。
こうした求愛行動や阻害行動はすべて、自らの適応度(fitness)を最大化させる目的を持っています。
適応度とは、生物個体が、自分の生活環境にどれだけ適応できているかを示す能力値であり、適応度が高いほど繁殖の成功率も上がります。
それでは、オスのグッピーの場合、求愛を邪魔する「阻害行動」と兄弟を助ける「補助行動」とでは、どちらが適応度を最大化しているでしょうか。
研究チームは、数学的モデルを作成し、どちらがより適応度を最大化させるかを検証しました。
12グループ、計600匹以上のトリニダード・グッピーを用いて調べた結果、兄弟の補助行動の方がオスの適応度を高めることが判明しました。
観察されたオスのグッピーには、兄弟の恋敵を追い払うだけでなく、兄弟の求愛を邪魔しない行動がよく見られました。
生物の繁殖にとって重要なのは、いかに自分の遺伝子を次世代に多く伝えるかです。
オスの兄弟たちは、言うまでもなく同じ遺伝子を共有しています。つまり、恋敵を排除すること、あるいは兄弟と同じ相手を争わないことで、自分たちの遺伝子はより広範囲に拡大し、引いては自分の繁殖利益にも繋がるのです。
研究主任のダニエル・ミッチェル氏は「今回の発見は、オスのグッピーが血縁認識を繁殖プロセスに利用している点で重要ですし、また、血縁者の交配を助けることで、同じ遺伝子の繁殖を促す『血縁選択説』を支持する点でも重要なもの」と話しています。