生命は自発的な対称性の破れによって発生を開始する

今回の研究によって、受精卵表面のタンパク質は、自発的な渦を形成する力があることがわかりました。
これは受精卵から生命への第一歩が、自発的な対称性の破れによって生じることを意味します。
というのも、卵子は受精が行われるまでは、極めて静的な状態に保たれています。
ヒトにおいては、卵子が作られるのは胎児期のときのみであり、以降は卵巣内部に何十年も安置されます。
受精はそのような静的な状態に、決定的な変化を与える切欠となります。切欠を受け取った受精卵はどこから力を供給されることもなく、自発的な渦運動を開始し、静的な状態を破って、細胞分裂へと進むのです。
なお、なぜ生命が最初の自発的な運動に「渦」を選んだかは、まだわかっていません。
自然界で最もよくみられるものを偶然採用したか、あるいは、生命と渦が深い部分で繋がっている可能性もあります。
いずれにしても、自発的な渦を、生命はトリガーとしてうまく取り入れていると言えるでしょう。