- プラスチックの中で最も処理が困難なポリウレタンを分解できるバクテリアが発見される
- このバクテリアは、ポリウレタンを唯一の栄養源とし、消化することができる
プラスチックによる汚染問題が公になって久しいですが、現状は何も進展していません。
特に問題となっているのが、「ポリウレタン」です。ポリウレタンは、プラスチックの中で最も硬くて耐熱性に長けており、再利用の方法がありません。
現在では、埋め立てるか海に捨てるかしか対処法がなく、環境汚染はますます深刻化するばかりです。
そんな中、ドイツ・ヘルムホルツ環境研究センターは、先月27日、「ポリウレタンを分解できる新種のバクテリアが発見された」ことを報告しました。
この新種バクテリアに協力してもらうことで、ポリウレタンのリサイクル方法が新たに見つかるかもしれません。
研究の詳細は、3月27日付けで「Frontiers in Microbiology」に掲載されました。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2020.00404/full
新種バクテリアが地球を救うか?
「TDA1」と呼ばれるバクテリアは、シュードモナス属の新株で、プラスチックが大量に存在する廃棄物処理場の地中で発見されました。
ゲノム解析や実験を通してバクテリアの系統や能力を調べた結果、有毒な有機化合物を消化できるバクテリア群に由来し、極限の環境のみで生息する「極限環境微生物」の系統に属していると判明しました。
極限環境微生物は、高温・高圧、強い放射能など、過酷な環境下でも生きられる生物のことです。
また、TDA1は、ポリウレタンを唯一の栄養源とすることも分かっています。化学物質との反応を調べる実験では、ポリウレタンベースのプラスチックを構成する化学結合を「噛み切る」能力が示されました。
研究主任のHermann Heipieper氏は「ポリウレタンを分解できるバクテリアはTDA1が初めてで、リサイクル困難なポリウレタン製品の再利用を可能にする重要なステップとなるだろう」と話します。
ポリウレタンは、スポンジや靴底、ジャージ、冷蔵庫、自動車の部品にいたるまで、あらゆる製品の材料となっています。
2015年のデータでは、ヨーロッパだけで年間350万トン以上のポリウレタンプラスチックが生産されました。軽量で柔軟性や耐久性に優れているため、商品としての価値は非常に高いです。
しかし、ポリウレタンは埋め立て地に廃棄されている中で、発ガン性のものを含む有害物質を放出します。
他にも海に不法投棄されると、数十年、数百年単位で未分解のまま残り、海洋ゴミとして蓄積します。また、小さな断片を海の生物たちが誤飲することも大きな問題でしょう。
昨年には、浜辺に打ち上げられたクジラの胃から100キロのプラスチックゴミが出てきたというニュースもありました。
TDA1は、こうしたプラスチック問題を解決する救世主となる可能性を秘めています。
しかし、TDA1を実地に活用する前に、消化の生化学的なプロセスや環境に与える副作用がないかどうかを把握しなければなりません。
生物を味方につけるには慎重を期する必要があります。ミイラ取りがミイラになっては元も子もありません。
また、TDA1だけに頼っていても、プラスチック問題は解決されないままです。
現在、専門家たちは、製造方法を変えることで、生分解可能なポリウレタンプラスチックの開発を進めています。また、私たち一般人は、ポイ捨てをやめることが最重要課題でしょう。
バクテリアに協力を求める前に、まずは人間側の意識を変える必要がありまそうです。