どうやって調べたのか?
今回の研究はT2K(Tokai to Kamioka)実験という研究プロジェクトによって達成されました。
これは茨城県にあるJ-PARC(大強度陽子加速器施設)で生成したミューニュートリノを、295km離れた岐阜県山中のニュートリノ検出器スーパーカミオカンデで検出するという、壮大な実験です。
©️T2K国際共同実験グループ,ICRRプレスリリースこの300km近い距離を移動する間に、ニュートリノのフレーバーが変化する割合を調べたのです。
今回の研究では、ここからCP位相角という値が導かれて、CP対称性の破れが検証されました。
CP位相角は、以前に同じCP対称性の破れに関する研究でノーベル賞を受賞した、小林益川理論で導入されたものです。
小林・益川両博士が研究したのはクォークという陽子や中性子を作っている素粒子についてでしたが、今回のニュートリノは電子などと共にレプトンという素粒子の仲間になります。
クォークについてはCP位相角が調べられていましたが、レプトンのCP位相角の値はこれまで未解明だったので、今回の研究はそれを明らかにしたものです。
検出装置は物質で出来ているため、反物質の方が検出しづらいことになります。それを考慮した上で、加速器から放たれたミューニュートリノが、スーパーカミオカンデで電子ニュートリノとして検出される変化の割合を予想し、実験が行われました。
結果、電子ニュートリノが90 個、反電子ニュートリノが15 個観測されました。
これはCP対称性が破れている場合に予想された、電子ニュートリノ82 個、反電子ニュートリノで17 個という数に近く、粒子反粒子の性質がレプトンでも大きく異なっていることを示す、証拠になるものです。
この実験は9年間もかけて行われ、信頼度は99.7%になるとのこと。
今回の成果について、村山斉東京大教授は「宇宙の成り立ちの解明に王手をかけた」と話しています。
宇宙誕生の秘密にどんどん迫ってきているようで、ワクワクしますね。
今回の研究は、T2K国際共同実験グループより発表され、総合学術雑誌「ネイチャー」に4 月16 日付けで掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2177-0
- 宇宙誕生時には物質と同数あった「反物質」だが、今はほとんど存在しない
- 素粒子ニュートリノと、その対になる反ニュートリノの性質は異なる可能性が高い