人工のバクテリオシンを制作する
バクテリオシンは緑膿菌のDNAに設計情報が記されています。
そのためバクテリオシンを標的捕捉型の抗生物質に改造するには、緑膿菌の遺伝子を書き換え、緑膿菌を抗生物質の生体工場にする必要があります。
ですが、簡単ではありません。
そこで研究者は複雑な書き換えを行う前に、簡単な実験を繰り返して、基礎的なノウハウを蓄積することにしました。
最初の一歩として研究者がまず目をつけたのは、杭を発射するトリガー機構の制御実験です。
バクテリオシンが杭を打ち出すトリガー機能は酸性に敏感であり、pH3.4より強い酸性環境では、勝手にトリガーが作動して、細菌に取りつく前に杭を発射してしまいます。
そこで研究者はトリガーを構成するドメイン(区域)の遺伝子を書き換え、アミノ酸のヒスチジンをフェニルアラニンに置き換えた変異体を作成しました。
結果、バクテリオシンは酸性に対する耐性を獲得し、強い酸性下でも細菌を攻撃できるようになりました。
今後は杭を発射を制御するトリガーだけでなく、足の標的認識機能も対象にして、バクテリオシンを本格的な抗生物質に変えていくとのこと。
この試みが成功すれば、各種の病原菌だけを特異的に認識して殺すことができるようになります。