質量の異なる連星ブラックホールの謎
この2つのブラックホールは、太陽質量の30倍と8倍になると言います。およそ3倍近くサイズが異なります。
太陽質量の8倍というブラックホールは、一般的に重い恒星が超新星を起こした際に誕生するサイズのもので、珍しいものではありません。
しかし、太陽質量の30倍というブラックホールは中間質量ブラックホールに分類されるもので、現在宇宙に見られるような天体では、この重さのブラックホールを形成することはできません。
考えられる可能性としては、ビッグバン直後に生まれた初代星と呼ばれる種族3の星です。
ビッグバン直後はまだ宇宙に水素とヘリウムしかなく、炭素以降の重い金属元素が極めて少ない状態でした。金属が無いと星に磁場や電場が発生しないため、恒星風がとても弱い状態になります。
恒星風が無いと外層の物質が吹き飛ぶこともないため、現代の星よりも非常に重い星が誕生するのです。
このため、大きく質量の異なる2つのブラックホールがどのように連星を形成したかは、興味深い問題です。
現在考えられる原因の1つは、これがもともと3つや4つの連星系で、大きいブラックホールはそれらがすでに合体したものであるということです。
しかし、それを確定する証拠はまだ得られていません。
連星ブラックホールがどうやって形成されるかはまだ謎が多く、完全に理解はされていません。今回の発見は既存の宇宙物理学モデルでは説明できないもので、こうした問題に理解を深めるための重要な発見です。
未知の連星ブラックホールが和音のような重力波を放って、発見されるというのはなんともロマンがありますが、ロマンだけでは語れない多くの謎が宇宙にはまだまだ満ちているようです。
この研究は、LIGOとVirgoの科学者によるコラボレーションによるもので、調査結果はアメリカ物理学会のオンライン会議で発表されています。研究内容の掲載学術雑誌は現在未定ですが、論文はコーネル大学プレプリントサーバーarXivで公開されています。
https://arxiv.org/abs/2004.08342