宇宙各地の電磁気力を測定する

電磁気力は宇宙を構成する4つの基本的な力の一つです(他の3つは重力・弱い核力・強い核力です)。
電磁気力は宇宙に存在する全ての原子核と電子の関係を決めており、適切な電磁気力がなければ原子も分子も構成されず、全ての物体は飛び散ってしまいます。
これまでにも、クエーサーの観測から、宇宙の遥か彼方にある領域では電磁気力が地球とは異なるかもしれないという報告があがっていました。
今回の研究ではより包括的な結論を導くために、機械学習を利用して複数の宇宙の領域での電磁気力(微細構造定数)が測定されました。
その結果、私たちの宇宙では、ある特定の方向に行くと電磁気力が強くなり、逆の方向に行くと電磁気力が弱くなっていることがわかりました。従来は、宇宙には東西南北などの方向性は存在しないと思われていましたが、どうやら特定の方向性が存在するようなのです。
観測を行った研究者たちは、初めはこの結果を信じられませんでした。
この結果が意味するのは、宇宙は均一ではなく双極的な性質を持ち、宇宙の異なる場所では異なる物理定数が存在することを意味し、既存の均一な宇宙認識を完全に破壊するからです。
しかし繰り返し検証を行っても、結果はかわらず、データは宇宙の不均一と双極性を示していました。
なぜ宇宙に方向性がうまれたのかは、完全に謎のままです。インフレーションやビックバンの方向が大きく歪んでいた可能性もありますが、推測の域を出ません。
生命は地球の近くにしか存在しないかもしれない

現在の宇宙論は、宇宙の均一性の元に成り立っています。
宇宙が不均一かつ、謎の方向性がある場合、私たちが求める標準理論にも大きな影響があるでしょう。
ですが、影響は単に理論だけに留まりません。
電磁気力、すなわち原子核と電子がお互いを引きあう力が、宇宙の場所によって異なる場合、宇宙の端と端では水の電離といった基本的な化学反応ですら全く異なる可能性もあるのです。
化学反応の基本が違えば、生命活動にも大きな影響があります。
楽観的な予測は「宇宙の端と端では全く異なる生命が生まれている」というものですが、悲観的には「地球と似た電磁気力の区域以外では、生命は誕生しない」ことになります。
今回の発見は物理学と宇宙生物学に劇的な影響を与えることになりそうです。
しかし、人類の科学史を紐解けば、常識の崩壊は常に新理論の芽になってきました。
今回の常識の破壊によって、人類の科学力は新たな飛躍の時を迎えるのかもしれません。
研究内容はオーストラリア、ニューサウスウェールズ大学のマイケル・R・ウィルチンスカ氏らによってまとめられ、4月24日に学術雑誌「Science Advances」に掲載されました。
https://advances.sciencemag.org/content/6/17/eaay9672
記事内容を一部修正して再送しております。





















