海中の磁気ルートが見えている?
研究チームは、複数のチヌークサーモンを用意し、磁気パルスに当てるグループと当てないグループに分けて比較しました。
実験は、母川の磁場を忠実に再現した「ローカル環境」と、ふ化後のサーモンが過ごす海洋を再現した「グローバル環境」とで行われています。
その結果、ローカル環境では、2グループともほぼ同じ振る舞いだったのですが、グローバル環境では、パルスを与えたサーモンは、与えなかった方とは異なり、互いにバラバラな方向に進みませんでした。
それぞれのサーモンの頭は互いに同じ方向を向いていたのです。
これは、海から母川に帰るための磁気ルートに反応しているものと思われます。
同チームのデビッド・ノーク氏は「チヌークサーモンにはおそらく、帰路の方向を示す手がかりとして磁気を感じるコンパス的能力と、広い海の中で自分のいる位置を正しく把握するマップ的能力の両方を持っている」と指摘します。
そして研究チームは、チヌークサーモンの磁覚が、体内にある「磁鉄鉱」に関係していると推測します。磁鉄鉱は、磁性鉱物の一種で、これまで複数の魚や鳥の体内に発見されています。
つまり、チヌークサーモンにとっては、体内の磁鉄鉱が磁気レセプターとして機能している可能性が高いのです。
ノーク氏は「私たちの知る限り、磁気パルスが生物の方位行動に影響することを実証した初めての研究でしょう」と述べています。
彼らの目には、人には見えない磁気ルートがはっきり映っているのかもしれません。
研究の詳細は、4月14日付けで「The Journal of Experimental Biology」に掲載されました。