ファージを体内に注入する治療法
私たちの体内にファージを注入することで、この問題を解決できるかもしれません。
人間はファージに対する完璧な免疫を持っているので、ファージの攻撃を受けることがありません。
加えて、抗生物質が腸内の良性な細菌も殺してしまうのに対し、ファージは誘導ミサイルのように標的だけを攻撃してくれます。
ですから、ファージ注入はスーパー耐性菌への安全な治療法になり得るのです。
しかし、ファージを使って攻撃すると、細菌はファージに対する耐性をもってしまわないでしょうか?
この点に関しての事情はかなり複雑ですが、ファージもまた進化できます。
結果として、両者は数十億年にわたり戦争し続けてきたのであり、今のところファージが優勢です。
仮に、細菌が数種類のファージに対する免疫を獲得するとしても、そのためには抗生物質への耐性を放棄しなければいけません。
つまり、細菌を板挟み状態に追い込むことができるのです。
実際に、この方法は他の治療手段が残されていない患者への試験で成功しています。
例えば、最も恐ろしい細菌の1つである緑膿菌は、ほとんどの抗生物質への耐性をもち、アルコールのハンドジェルに晒されても生き残ることできます。
この緑膿菌に感染している患者は、数年間闘病生活を送っていました。
ところが、数千のファージ投入によって、たった数週間で完治したのです。
このように、ファージによる治療試験は大きな成果を収めていますが、現段階では公式の認可が下りていません。
しかし、ファージに対する関心はますます高まっており、研究も進んでいます。
近い将来、抗生物質に頼る時代が終わり、地球最強の存在であるファージにこそ頼る時代が到来するのかもしれません。