火星環境を再現して泥を流す
これまでは、火星で泥水が噴出しても、気圧がほぼゼロに近いために、水は一瞬で蒸発してしまい、後には泥の粒子だけが残ると考えられてきました。
しかし実際に火星と同じ低温低圧の環境で泥水を流した結果、泥水は上の動画が示す通り、マグマのように粘性を保ったまま流れ続けたのです。
原因を探るために研究者が凍った泥を取り出して分析したところ、上の図が示すとおり、泥は地球上での溶岩と同じように多くの気泡を含んでいることがわかりました。
これは低温低圧環境において、泥の中の水が盛んに蒸発していたことを示します。
また、流れ方もよく似ていることがわかりました。
地球のマグマは表面が冷えると流れが一旦せき止められますが、マグマが溜ってくると決壊を起こして、次の流出が起こります。そしてせき止めと決壊を繰り返すことで、冷えたマグマの表面の特徴的な形状が作られます。
それと同じことが、火星環境の泥水でも起こったのです。
泥水は表面の凍結で一旦、流れがせき止められましたが、後ろから流れてくる泥水がたまると決壊し、新たな流出を起こします。
火星の低温低圧の環境にとっては、液体の水を含んだ泥は「極めて高温の流体」であり、マグマと同じように振る舞うのです。
そのため、火星で冷えたマグマだと思われていた構造は、実際は冷えた泥である可能性が出てきました。
火星は私たちがこれまで予想していたよりずっと、冷えた泥で覆われた星だったのかもしれません。