意味飽和は私たちに心地よさを与える場合がある
彼の研究は「意味飽和」がわたしたちを困惑させるだけのものではないことを示してきました。
その特徴的なものとして音楽が挙げられるでしょう。
私たちは気に入った曲を何度も繰り返し聴くのが好きです。実はこの時、「意味飽和」がプラスに作用しているのです。
米国アーカンソー大学音楽認知研究所の所長であるエリザベス・ヘルムス・マーグリス氏はAeon誌に次のように書いています。
「意味飽和は曲の歌詞において重要な役割を果たしています。コーラスの繰り返しによって単語やフレーズは飽和し意味を失います。
そして、このような意味飽和は、歌詞に対して新しい聴き方を可能にします。
言葉そのものは感覚的なものへと変換され、より直感的に歌詞と向き合うことを可能にするのです」

同じ歌詞を何度も聞き、口ずさむとき、その歌詞をより音楽の一部として楽しむことができるというのです。
これによって、リズムに乗ったり歌ったりすることをより魅力的なものと感じるようになるのです。
さて、ジェームズ氏の研究以外でも、意味飽和は今日様々な分野で分析されています。
例えば、マーケティング担当者は、広告に同じ言葉を使い続けることでその効果性が薄れていくことを知っています。「意味飽和」を考えることで、販売戦略を再考しているのです。
このように意味飽和は至る所に存在しており、時に私たちを困惑させ奇妙な思いを植え付けます。しかし、また時には心地よい経験を与えてくれることもあるのです。
脳の反応には不思議で奇妙な部分がたくさんあります。ジェームズ氏の研究は「意味飽和」をかなり掘り下げてくれましたが、この分野でさえ、まだまだ分析できることがありそうですね。