塩化ナトリウムの六角形2次元物質
さて、「炭素」の2次元物質が存在するなら、その他の分子でできた2次元物質も存在するのではないでしょうか?そしてそれはグラフェンと同じように高機能かもしれません。
この点に注目したティクホミロバ氏は、様々な物質で2次元構造ができるかどうか研究を行ない、塩化ナトリウム(以下、NaCl)について調査している時に、ある1つの仮説にたどり着きました。
その仮説とは、「ダイヤモンドの表面上にはNaCl薄膜が存在する」というものです。
既存のNaClは通常、立方体からなる立体構造で成り立っています。
ですから、彼の仮説によると、ダイヤモンドの表面には構造の大きく異なったNaClが存在することになります。
さて、彼がこの理論を証明するために実験を行ったところ、実際にダイヤモンドと薄膜のNaClが強く相互作用し、異なる構造(六角形)のNaClが合成されました。
このNaCl薄膜の厚さの平均は約6ナノメートルであり、これ以上厚くなると六角形ではなくなり、立方体へと戻ってしまうとのこと。
そして、作成されたNaCl薄膜は、ダイヤモンド基板との強力な結合と幅広い電子禁制帯を持つため、半導体である「ダイヤモンド電界効果トランジスタ(信号増幅・切り替え装置)」として電気自動車や通信機器に応用できます。
電界効果トランジスタは現在ホウ素に頼っていますが、NaCl薄膜を利用するなら、さらに安定性を向上できるのです。
また、今回の塩化ナトリウムの2次元物質の発見は、他の種類の2次元物質形成の予測に役立つかもしれません。
今後、更なる2次元材料が発見され、エレクトロニクスやその他の分野の飛躍へと繋がる可能性があるでしょう。
この研究は4月24日、「Journal of Physical Chemistry Letters」に掲載されました。
Exotic Two-Dimensional Structure:The First Case of Hexagonal NaCl
https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.jpclett.0c00874