- 新透明化技術「ディープ・クリア」は、解剖せずに生物の中身を観察できる
- ディープ・クリアは異なる化学処理の相乗効果によって、迅速な色素除去と組織透明化を可能にする
- ディープ・クリアは生物の分子レベル違いを解明し、その原因の追究に寄与する
これまで、内部構造を把握するために多くの生物が「解剖」されてきました。
しかし、「解剖」には限界があります。特に複雑な細胞や神経系を把握するためのプロセスは難しく、時間がかかる上に失敗のリスクが大きかったのです。
ウィーン大学・分子生物学研究センターである「Max Perutz Labs」のフロリアン・レイブル博士らは、解剖なしでも生物構造を細部まで観察する方法「ディープ・クリア(DEEP-Clear)」を開発しました。
この方法により様々な生物を透明化し、中枢神経系などの分析が難しい部位の構造を把握できます。
新透明化技術「ディープ・クリア」
これまでにも、生物の透明化技術はいくつか検討・開発されてきました。
しかし、それらの透明化技術は組織に存在する様々な色素を除去できず、詳細な画像を作成するには不十分でした。
そのため、従来の方法では、特定の無色器官や色素沈着が少ない一部の生物にしか適応できなかったのです。
さて、今回発表された新しい透明化技術「ディープ・クリア」は、異なる化学処理の組み合わせによって相乗効果をもたらし、迅速な色素除去と組織の透明化を可能にしました。
生物にはカロテノイド、メラニンなどの様々な自然発生色素がありますが、これらを効率的に除去できます。
加えて、化学処理の短縮により組織や生物の完全性が保たれるため、目的の分子や内部構造が保持される可能性が高くなるとのこと。
また、高度なライトシート顕微鏡を使用することにより、組織を透明化して必要な内部構造のみを写しだすことが可能。コンピュータ上に取り込むことで3Dモデルまで作成してしまいます。
さらに、ディープ・クリアを使えば、1日未満での完全な全身透明化が可能。実際に研究者たちはディープ・クリアで無傷な透明サンプルを作り出し、特定のタンパク質・DNA・RNAを観察できました。