小魚専用だった毒インスリンを改造してヒトでの効果をもたせる
ただ残念なことに、アンボイナガイから毒インスリンを抽出しても、直ぐには人間には使えませんでした。
アンボイナガイの毒インスリンは獲物である小魚に対して効き目を発生させるように特化して作られており、人間に対する効果は限定的だったからです。
そこで研究者は、毒インスリンの効能部位を切り取り、人間のインスリンから凝集能力を奪ったものに結合させた、毒インスリンと人間のインスリンのハイブリッドインスリンを作りました。
このハイブリッドインスリンは、ミニインスリンと名付けられ、ラットを使った実験において、通常の人間のインスリンと同じレベルの血糖低下作用を、より短時間で発揮できたとのこと。
研究チームのChou氏は「ミニインスリンは既存のインスリンに比べて小さいため合成が容易であるだけでなく強力で即効性がある」と述べ、新世代の糖尿病治療薬になると期待をにじませました。
また今回の研究は、思いもよらない生物が、人類の主要な疾患の治療薬を提供してくれることを示しました。
このことは人類が、生物の種の保存の重要性を再考するきっかけになるかもしれません。
今どこかでひっそりと絶滅した生物が、私たちの未来を救う生物だった可能性も十分に考えられるのです。
研究結果はアメリカ、ユタ大学のXiaochun Xiong氏らによってまとめられ、6月1日に学術雑誌「Nature Structural&Molecular Biology」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41594-020-0430-8