苦痛を感じる飼い主に反応
研究チームは、犬の動機をより深く理解するため、別パターンでの実験も行いました。
ボックスの中の飼い主が、助けを求めるのではなく、声に出して雑誌を読むパターン(音読条件)です。これにより、飼い主が苦しんでいる場合とそうでない場合とで、犬の救助反応に違いが出るかを調べました。
音読条件で救助に成功したのは16頭で、4頭だけ減りました。しかし、犬の抱く不安レベルはまったく違っています。
飼い主が助けを求めるとき(苦痛条件)、犬も同様にストレスを感じて、吠える回数が明確に増えていたのです。また、動揺した様子で、ボックスの周囲をうろついていました。
一方の音読条件では、吠えることなく、ボックスから数メートル離れた場所で座る様子も多く見られました。
実験を数回繰り返す中で、苦痛条件では犬の不安レベルも一定でしたが、音読条件では回を増すごとに不安レベルが下がっていました。
これは飼い主の気持ちが犬に伝わる「感情伝染(motional contagion)」を示します。
同チームのクライヴ・ウィン氏は「この結果は、犬の動機が飼い主の苦痛レベルに大きく左右されることを示します。感情伝染とは、一種の共感能力であり、犬に飼い主を救いたいとする気持ちがあることを意味するでしょう」と説明しました。
やはり犬は、私たちの最優のパートナーなのかもしれません。
研究の詳細は、4月16日付けで「PLOS One」に掲載されています。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0231742