進化の爆発
この生物が発見された年代は、いわゆるカンブリア爆発と呼ばれる時期と一致します。
カンブリア爆発は、約5億4000万年前のカンブリア紀に起きた、急速な生物の進化、多様化の時期を指します。
この時期に目や内蔵、手足を持つ最初の動物たちが出現しています。
これらは生物の相互作用についても著しい影響が与えられた時期で、例えば他の生物を積極的に捕食する生物は、この頃に誕生しています。
今回の発見の重要な点は、このカンブリア紀にもう1つの生物的な相互作用である寄生が始まっていたということです。
寄生虫が最初に誕生した時期を特定することは、寄生虫が生命に与えた影響を理解するための重要な一歩です。
例えば生物が有性生殖を行うようになったのは、寄生虫に対する対抗手段の1つであると考えられています。
生物の進化を理解しようとするとき、寄生虫がどのように関わっていたかも重要な要因になるのです。
また、寄生虫はこれまでに何度も進化を繰り返してきたことがわかっており、ほぼすべての動物群に1種以上の寄生虫(寄生生物)が存在しています。
例えば吸血コウモリは寄生生物の1種と考えられます。寄生への移行は、いつどこでも起こりうる進化戦略なのです。
過去にどのように寄生虫が発生し、彼らの生物学的な圧力がどのように生命の歴史に変革を与えたかはまだわかっていません。
これは、生物研究における現在も、進行形の課題なのです。
この研究は、ノースウエスト大学のZhifei Zhang氏を筆頭とした研究チームより発表され、オープンアクセスのオンライン学術雑誌『Nature Communications』に6月2日付で掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41467-020-16332-3