培養皮膚は異形へと成長する
皮膚は、外部ストレスから体を守るだけでなく、触覚を伝える神経や脂を分泌する皮脂腺や脂肪組織を備えた多層臓器であり、これまでの技術では、その複雑な機能と構造を再現するのは困難でした。
しかし研究チームは上の図のように、iPS細胞(万能細胞)から表皮と真皮を作り出し、それらを互いに相互作用させることに成功したとのこと。
実験で培養皮膚は順調に成長していきましたが、培養開始から70日目、妊娠中の胎児が毛を生みだす「毛包」を作り始める時期になると、培養皮膚は異様な形態に成長しました。
なんと培養皮膚はあたかも、体の内面と外面が裏返しになったような構造になり始めたのです。
毛包の方向も逆であり、毛の根元が皮膚から離れる方向に向かって伸びていきました。
120日目を過ぎると裏返しはさらに激しくなり、皮膚の表面側で神経や皮脂腺、軟骨といった内部の組織がつくられはじめる一方で、表面から裏面へ向けて毛が生えてきたそうです。
140日が経過する頃には、表皮・真皮・脂肪・皮脂腺・毛包・感覚神経などが主要な組織が、全て裏返った状態で完成します。
全体の形は異様ではありますが、それぞれの組織は正常に形成されています。
またこの異形を磨り潰して、働いている遺伝子を調べたところ、人間の胎児の頭皮とよく似たパターンを示しました。