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- 記憶を司る海馬では、大人でも少数ながら毎日神経細胞が再生されている
- 新たな研究は動物実験で、睡眠中に新生ニューロンの活動を観察することに世界で初めて成功
- 怖い体験で活動した新生ニューロンは、睡眠中に再活動していることを発見した
ヒトにとって恐ろしい病気の1つが、アルツハイマー病やパーキンソン病など脳に関する疾患です。
また年をとってくると脳卒中も怖い病気の1つです。
こうした疾患の恐ろしいところは脳の神経細胞が基本的に失われると二度と再生しないという特徴にあります。
ヒトの体内の細胞は、その多くが毎日再生しています。そのため普通のケガなら数日で治癒します。しかし、脳に関してはそれができないため、脳疾患の治癒を難しいものにしているのです。
しかし、最近の研究では、記憶に関わる海馬では成長期を過ぎた大人でも、ごく少数ながら神経細胞(ニューロン)が毎日再生していることがわかってきました。
この大人の脳内に残る僅かな再生能力をうまく利用できれば、失われたニューロンをもとに戻して、脳機能を回復させることができるかもしれません。
現在そうした研究が世界中で進められており、今回日本の筑波大学、東京大学などの医学チームが睡眠と脳再生の関係を調査した研究を発表しました。
それによると、どうも脳の再生には、恐怖の記憶、怖い夢が関係しているようなのです。
睡眠中の新生ニューロン
研究チームは、超小型の脳内視鏡(特殊な顕微鏡)を使って、睡眠中のマウスの脳内の様子を調査しました。
新生ニューロンが生じるのは記憶に深く関わる海馬です。
記憶の定着には睡眠が重要な役割を果たしていることが知られているため、睡眠中の活動が研究対象となったのです。
ここでは刺激としてわかりやすい、起きている間の恐怖体験が、その後の睡眠中の新生ニューロンの活動にどう影響するかが調べられました。
すると、恐怖体験をしたマウスは、その体験時に活動していた新生ニューロンと同じニューロンが睡眠中に活動しているということがわかったのです。
そこで、研究チームは光刺激によりピンポイントでニューロンの活動を制御する技術を開発し、新生ニューロンを活性化させたり、逆に活動を抑制させることで何が起きるか調べました。
すると、恐怖体験で活動した新生ニューロンを睡眠中に抑制したときに限って、マウスが恐怖記憶を忘れてしまうことがわかったのです。
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通常のマウスが、恐怖経験を記憶すると、次からは怯えたように行動するのに対して、睡眠中に、新生ニューロンを抑制されたマウスは、恐怖の記憶を忘れてしまったように振る舞ったのです。
さらに解析した結果、こうした機能は、新生ニューロンの中でも特定の成長段階にあるものに限られていました。
生まれた直後や、成長しきった新生ニューロンでは、同じ現象は確認できなかったのです。