意外としょぼい壁
研究チームは高精細のドローン撮影、衛星からの解析により北線の完全なマッピングを初めて行いました。
その結果、壁は連続した構造物で、もっとも保存状態の良い場所では高さが1メートル、幅は約10メートルだと明らかになりました。
高さは比較的低く、街道近くに築かれており、軍事的な機能はほとんど果たしていなかった考えられます。
壁に沿った周辺には、古代の構造物も明らかになりました。
これらの建造物は、長方形の建物が壁を監視する兵士の基地であり、円形の構造物は家畜を入れるための飼育場だった可能性があります。
こうしたことから、研究チームは、北線の長城は「要塞化された国境ではなかった」と考えています。
このため、研究チームは、長城は人々や家畜の移動を監視しコントロールするために築かれたものであり、その目的の多くは交易など人々の移動に対して課税を行うためだったと結論づけています。
万里の長城は明の時代に建造されたレンガ造りの強固な城壁のイメージが強いですが、多くの時代ではそこまで強固なものでもなく、もっと平和的な利用がされていたのかもしれません。
この研究は、イスラエルのヘブライ大学教授Gideon Shelach-Lavi氏を筆頭としたチームにより発表され、論文は考古学に関する学術雑誌『Antiquity』に6月9日に掲載されています。
https://doi.org/10.15184/aqy.2020.51
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/46381
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