オスは子の成長を促す「母胎」の役割も果たしていた
その結果、稚魚の乾燥重量は、育児のうにいる間、ほとんど変化していないことが判明しました。
調査によると、受精卵の成長は、卵黄の消費から始まっていたので、稚魚の乾燥重量は卵黄の消費分だけ減少するはずです。
しかしこれとは別に、受精卵と稚魚の脂質量を測定した結果、成長のプロセスで、脂質量の減少がほぼ起きていませんでした。これは、父親となるオスが、卵黄のなくなった後で、脂肪の形で栄養分の「おかわり」をわが子に与えていることを示します。
つまり、タツノオトシゴの稚魚は、多くの生物と同様、「卵黄栄養依存 」から「母体栄養依存」、正確に言うなら「父体栄養依存(パトロトロフィー)」に移行するということです。
オスが栄養を与えている方法までは説明できていませんが、育児のう内を調べると、受精卵が袋の壁にしっかり埋め込まれていました。
これは、育児のうが母親の「胎盤」のような機能を持ち、それを通じて栄養補給している可能性を示唆します。
このメカニズムを断定するには別の調査が必要ですが、それでもオスの育児のうに、栄養や酸素の供給能力および感染症などから子供を守る機能があるのは確かです。
タツノオトシゴのオスは、予想以上に出産の重要なプロセスを請け負っているのかもしれません。
研究の詳細は、7月2日付けで「Journal of Comparative Physiology B」に掲載されています。
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00360-020-01289-y