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「ワームホール」の生み出す時空のさざ波を予測。 重力波検出器による発見を目指す (2/3)

2020.08.01 Saturday

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特殊な重力波

現実に存在するかどうかは別として、もしあるとしたらどのように検出が可能かを想定することは非常に重要です。

現在ブラックホールの研究で大きな成功を収めているのが、重力波を捉えるレーザー干渉系重力波検出器による観測です。

重力波は時空を揺らすさざ波で、重力波観測では非常に重い2つ以上の天体が互いを回り合ったり、衝突したとき生み出される重力波を検出しています。

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中心で質量の異なるブラックホールが回り合っている。右下が中央の拡大。/Credit:Max-Planck-Institut für Gravitationsphysik (Albert-Einstein-Institut),GW190412: Binary Black Hole Merger

今回の研究者である米国ヴァンダービルト大学の研究者William Gabella氏は、もし仮にワームホールが存在した場合、それが生み出す重力波がどのようなものになるかを考えました。

彼が想定したのは、地球から16億光年離れた宇宙に存在するワームホールです。もしその周りを太陽の5倍の質量を持ったブラックホールが周回した場合どうなるでしょう?

この場合、最初の見え方はただの連星ブラックホールになるだろうと予想されます。そのとき発生する重力波は、チャープと呼ばれるタイプの時間とともに周波数が増加する波形パターンになります。

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チャープ信号の基本的な例。チャープは鳥のさえずりを意味する英語。/Credit:Wikipedia

では連星ブラックホールが融合するように、ブラックホールがワームホールへ落ちた場合、何が起きるでしょうか?

研究者の予想では、このときブラックホールの重力波はこの宇宙から突然消失し、第2の宇宙もしくは離れた時空へ移動します。第2の宇宙に出たブラックホールはまず回転が反転して外向きの渦巻きになり、その後もとの回転に戻ろうとします。

しかし、その勢いによって再び第1の宇宙へ戻って外向きの渦として顔を出します。

このとき重力波は、チャープと反対のパターンである「アンチチャープ」を生成し、その後またチャープに戻ります。そしてまた第2宇宙へと飛ばされ消失するのです。

このようにして、ワームホールに吸い込まれたブラックホールは重力波のエネルギーを失うまで、第1宇宙と第2宇宙の間で跳ね続けることになります。その間、この奇妙な重力波が観測され続けるだろうと予想されるのです。

このおかしな信号は単純な連星ブラックホールの衝突では発生しません。ワームホールが存在した場合にのみ見られるため、その証拠となるのです。

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