トノサマバッタは群生化すると外見と行動パターンが変わる
古代の人間はバッタの群集化を超常的な存在のせいだとしていました。
しかし科学の発展により、原因を神の罰から、何らかの集合フェロモンが原因であると考えられるようになります。
ただフェロモンのような揮発性(しかも未知の)物質の検知は難しく、今日に至るまで群集化のトリガーとなる原因物質を特定できずにいました。
そこで今回、研究者は網羅的な手法をとることにしたとのこと。
研究者はバッタの体や糞から放出されていたあらゆる揮発性物質を収集し、単独で生活するバッタと、群生型のバッタに違いがないかを調べたのです。
結果、6種類の化学物質が単独のバッタよりも群集性のバッタで多く放出されていることがわかりました。
研究者はこの6種のうちのいずれかが群集化フェロモンに違いないと考え、各化合物がバッタに及ぼす影響を調べました。
結果、4-ビニルアニソール(4VA)と呼ばれる化学物質が群集化に関与していることが判明します。
4VAは幼虫から成体まで、単独型・群生型を問わず、集合の性質を持つ、あらゆるバッタを引き付ける効果があることがわかったのです。
4VAは上の図のような構造をした、揮発性のある有機化合物で、ヒトには甘い匂いとして知覚されます。
これまでにも4VAは、バッタの体やバラなど一部の植物に含まれていることが知られていましたが、群集化作用のあるフェロモンとしての役割がみつかったのは今回がはじめてとなります。
次に研究者はバッタがどのような条件の下で4VAを発するかを調べました。
その結果、4〜5匹バッタが狭い空間で密集した時に4VAが放出されはじめることを発見します。
またバッタの集団規模が大きくなるほど4VAの濃度が急上昇し、さらに大きな群集化シグナルとして周囲のバッタを呼び集めることがわかりました。
バッタの群れは指数関数的に成長することが知られており、この集まれば集まるほど強く放出される4VAが群集化の中心的な役割を果たしていると研究者たちは推測しました。
そしてこの推測を検証するために、バッタが4VAを感知するために使っている、嗅覚遺伝子(Or35)を破壊してみたそうです。
もし4VAが本当に群集化のシグナルとなっているなら、感知するための嗅覚遺伝子(Or35)を壊されたバッタは4VAに引き寄せられないはずです。
そして結果は予想通りとなり、嗅覚遺伝子(Or35)を破壊された変異体は、4VAが発せられても群集化しなかったのです。