なぜローレンツ水車はカオスなのか?
通常の水車が微小な要素を無視して回転し続けるのに対し、ローレンツ水車はそれらの影響を強く受けるため、全く予測できません。
ローレンツ水車がどうしてカオスな動きをするのか、Java実験室の「ローレンツ水車」シミュレーションから考えてみましょう。
蛇口から水が流れ始めた段階では、時計回りに回転し始め、新しいバケツにも次々と水が注がれていきます。水入りバケツは重力の影響を受けるため、水車が時計回りに加速するのが分かりますね。
一回転したところで、水車の回転速度が落ちています。
これは水車が加速したことによって、新しいバケツには少量の水しか入らなかったのが原因です。結果として画面左側のバケツたちの方が重くなり反時計回りの力が働いたのですね。
さて回転速度が落ちたことにより、新しいバケツには大量の水が注がれるようになりました。
その間にも他のバケツの排水は続いているので、開始段階と似たような状況になっています。つまり、これからまた時計回りに加速するのでしょう。
しかし、開始段階とは微妙に状況が異なっていますね。
そのため、その後も反復を繰り返しますが、回転速度・注入量・バケツ水量にも微妙な違いが生じ、徐々にその変化が積み重なります。
そしてある時、上図のように左側のバケツだけに大量の水が溜まった状況になりました。これにより時計回りの力が完全に失われ、反時計回りに動き始めるのです。
あとはこの微妙な要素が相互に影響を与え続け、時計回りと反時計回りを予測できないタイミングで繰り返します。
様々な要素が相互かつ敏感に影響しあって大きな変化を与えていることが分かりますね。
そしてこれらは蛇口から流れる「水量の誤差」や水車の位置の「若干のずれ」という微小な初期条件の違いによってもたらされるのです。
ハーバード大学が行った実験では排出された水が跳ねたり、他のバケツへと流れ込んだりしているため、さらにカオスになっていました。
今回はローレンス水車の動きと影響力の複雑さを単純な状況観察から説明しましたが、数式でローレンス・カオス理論を理解することもできます。カオス理論の深みにはまりたい方はぜひ調べてみてください。