元のブラックホールにも謎が多い
さらに今回の発見では、元となった2つのブラックホールの大きい方にも謎があります。
大きい方のブラックホールは太陽質量の85倍ありましたが、通常の超新星爆発では形成されるブラックホールの限界サイズは65倍程度と考えられています。
これは、星が安定して超新星を起こしブラックホール形成するための質量には限界があるためです。
星は太陽の130倍の質量までは超新星でブラックホールを形成することができます。超新星で多くの物質が飛び散ってしまうため、最終的に形成されるブラックホールの質量は太陽質量の65倍程度となるのです。
では太陽の130倍よりも重い星はどうなるかというと、この場合、星は対不安定型超新星というものを起こします。
対不安定性型超新星では星は核も残さず吹き飛んでしまうため、ブラックホールは形成されません。
太陽の250倍以上の質量だと光崩壊というまた別のプロセスが起こりますが、何にせよ現在の理解では太陽の65倍以上のブラックホールの形成は超新星では生まれにくいと考えられるのです。
そのため、太陽の85倍という質量のブラックホールがどうやって現れたのかが問題になるのです。
もちろんこのブラックホール自体が、別の連星ブラックホールの合体から生まれたとシンプルに考えることもできます。
しかし、すでに66倍のブラックホールと連星だったことから、ひょっとすると星が崩壊して直接形成された可能性も考えられます。
もしそうだとすると、私たちの理解を超えたブラックホール形成プロセスが存在することになるのです。
重力波観測はまだ始まったばかりであり、中間質量ブラックホールは今回が初の発見です。
それはこれまでの謎を解明するというよりは、逆に天文学者に新たな疑問を数多くもたらすものになったようです。